樹海21
意外な人物はイサオさんだけでなく
カオルさんもだった。
その美貌に僕らは驚いた。
若くて美貌の彼女がどうしてここに
などと言うのは、いわずもながだが
彼女もうつ病の上に心の傷を抱いている。
高校で教師にセクハラを受けたうえに
それを訴えたら
労働組合で地位のあった教師を訴えたことで
今度は彼女が加害者のように
他の教師から扱われ
生徒からもひどいいじめを受けて
鬱になり退学した。
もう学校と言う場所には行きたくはないが
やはり親は大学に行かせたいとプレシャーをかけてくる。
大学や職場と言う集団が彼女には耐えられいのだ。
親の気持ちはわかるのだが
彼女の動機が今一つわれわれと違いせっぱ詰まってないので
止めたのだが、強引についてきたのだ。
どれだけの深い傷がついたのか、余人には分かりえない。
自殺しようとする人間が他人に説教できるのだろうかと僕らは思ったのだ。
主催者のとんさんは
世話好きな感じの人物ではあるが、彼も深い闇を抱えているのだろう。
大手の上場会社に就職して、意気揚々だった彼を
会社の倒産が襲った。
有名大学を出て、大手勤務の彼は自分ならこの難局を乗り越えれるだろうと思ったようだが
どこも雇ってくれるところはなかった
うまく最終に残っても、最後には自分と同じレベルの人間がわんさといたのだ。
レベルを下げたら下げたで
昔のように、有名大学、有名企業だからとありがたがらず
煙たがって、採用されずに、履歴の山が築かれた。
そして1年もすぎると、今度は何もしてなかったことが問題視された。
だから、とんさんは公務員試験を受け、難関を突破したのだが
公務員の口はなかった。
試験を受けてもコネも若さもないとんさんは採用してもらえないのだった。
親のすねをかじるニートと言う兄妹からの批判も出て
甘んじてバイトを始めたが、それもお小遣い程度でしかない。
この先のことを考えたら生きていける可能性などないと
とんさんは気が付いたのだ。
とんさんの家はいわいる旧家でプライドが高い両親ももとで育った。
だったらコネでも取ってきてくれればいいが
いまどきの旧家であるだけでコネなど降ってはこない。
現状と言うものを両親も分かっていないのだ。
これが、みんなの秘密と言うか、、いや秘密と言うべきものではない
みんなの事情だ。