樹海14
食べたいと言う気持ちはとっくに消えていたし、食べても味はなかった。
僕の働く書店は小さなチェーン店だったが、働きがいがあった。
店長は温厚で、店の雰囲気も悪くはない。
あとはただ、ちゃんとした保障や時間が長くなれば言うことはなかったのだが。
店長は僕のことを考えてくれているようで、前は残業させてくれたりするが、
昨今の事情から、それも減っている。
生きていくにはもっと働かなければないが、時間の合う働き口がなかった。
「最近顔色悪いスよ、大丈夫ですか?」
同じ店で働く、若いバイトの石田くんが、心配そうに僕を見ている。
自分では分かってなかったが、体重が減っているのでかなり見栄えが変わっているのだろう。
彼も就職浪人で、就職するまでと言うことで親のところから通っている。
今、働きざかりで経験を積むべき時を無駄に過ごさなければならない青年が増えている。
まだ、若いからじっくりと正社員をさがしていたら、待ち過ぎて、企業には欲しくない人材になる
氷河期の若者達だ。
企業は即戦力といいながら、自社で教育せず派遣社員を雇い。
社員には大学卒予定者を取る。
そんな企業の思惑で、彼もまた僕のように辛苦を味わうのだろうが、
まだ若いのでそこまでリアルに考えてはいないようだ。
僕は人の心配などしているほどの資格はない人生の落伍者なので、
彼に何の言及も出来ないが、僕のようにならなければいいと思うだけだった。
睡眠不足と食事が食べれないことで、僕はさらに病を増長させていた。
しかし、病院に行く費用もない。
それくらいならインターネットの世界で、、
僕の唯一の居場所にいたかった。