樹海12
ソニアさん言葉に僕はほっとした。
彼女は分かってくれる。
「まあ、ここはみんな似たりよったりの、世間にはぐれたものばかりだから、説教はいいって、彼だけの責任じゃない。自己責任って言うけど個人にはどうしょうもないこともあるよ」
他のメンバーもそう書き込んでくれた。
結局はみんなが世間の敗残者だと、僕は自分だけが駄目な人間ではないと思いほっとした。
そして僕はここの常連となった。
甘い考えだと、もっと苦しい人間は、いるなどと説教するのは、大概自分は恵まれた立場にいる人間だ。
この情報のあふれた時代に、希望のない状況が、いかに人を痛めつけるか、裕福な人間は分からないだろう。
所詮当事者にしか分からない苦しみだ。
地獄のような心の苦しみは、眠りをさまたげ、自分の将来はないのだと責め続ける。
やり直しなんかきかない。どうせ苦しむなら死ななければと言う思いがぐるぐるする。
チャットでのひとときが慰めだった。
チャットで話すことによって、だんだんとみんなのことが分かった。
顔のない匿名の世界ではどんなつらいことも言える。
ソニアさん四十代の女性で、やむ終えない事情で、借りたローンが膨らみ、離婚し自己破産してスナック勤めをしているが、離婚し子供もいない自分の将来に絶望している。
いまさらやり直す希望も体力もない。そう言うが僕も同じだ。
希望がない毎日は神経を疲弊させ、絶望の未来しか予測できないようになる。