樹海10
インターネットを解約する前に僕はネットの中に救いを求めた。
だが、そこには全く理解しない者と、僕と同じ境遇の者が沢山いた。
誰もかれもが、絶望の海の中で窒息しそうになっている。
僕はそして、「樹海へ行こう」のホームページに辿り着いた。
樹海とは株で失敗したら死ぬしかないと言うブラックジョーが
株の掲示板では取り交わされているのだ。
同じ境遇の人を見つけ慰め合いたかったのかもしれない。
このままでは現実に押しつぶされそうで、何かに救いが欲しかったのだ。
僕はそのホームページのチャットルームにログインした。
「おつ、新人さんだ」
「こんばんわW」
チャットルームとはインターネットで複数の人間が同時に会話できる部屋のようなものである。
「はじめまして」
さっそく声をかけてくれるので、僕も挨拶してみる。
もっと排他的な感じかと思ったがフレンドリーで、僕を暖かく迎えてくれた。
いつの間にか僕はここで自分の体験を吐露していた。
ネットなので相手の顔が見えないという気安さで、匿名性がいいたいことをいえた。
「俺はここの管理人です。なかなか樹海へは行けない根性なしなんで、まあぐちってるわけだけど」
とんさんと言うホームページの管理人も飾らない言葉で安心を与えてくれる。
ここには僕を見下げ馬鹿にする連中はいない。
中年で仕事も金もスキルもない人間をバカにはせず。
ぐちとしか思えない言葉にも優しく返してくれる。
こんな場所を僕は求めていた。
傷をなめ合っても仕方ないじゃないかと思われてもいい。
僕はここに自分がいてもいい場所を見附たのだ。