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82、聖剣の底力


「……っあ、」


そうか。……そうだったのか。

やっと気づいた、自分自身に足りないものに。


レンは、王子として、勇者として、この世界を守るために戦っている。

不死鳥も、竜も、初代魔王の意志を継ぐために私に加担してくれた。……軽い正義感で、責任も負わずに、自分勝手に突き進んでいた私とは違う。

皆、この世界を愛してるんだ。


「私に足りなかったものは、」


現実を見つめる勇気。

真実を認め、自分で歩きだそうとする意志。



「この世界で生きる、覚悟だ」



_____轟!!と。

瞼を灼くほどの光に、喉の奥で悲鳴が漏れる。

光の奔流。

透き通るような白銀を基調とした光が広場の隅々まで広がり、黒い光を消し飛ばしていくのがわかる。

その圧倒的な聖なる光に包まれた三人の四天王が、ばたばたと地面に倒れていくのも見えた。


「すげぇ」


唖然としている私の後ろで、いつの間にか疾竜に下ろしてもらっていたらしいレンが呟いた。


「レン! 大丈夫なの!?」

「そうみたいだな。この聖力の奔流のせいか、手首の痛みも引いたよ」

「よかった……」


不意に、強く聖剣が光を発した。

……帰りたがっているのだ。本来の主人のもとに。


「ありがとう、聖剣アポロン。あなたに守られてばっかだった……。

レン、これ、返すね」


光の中で、レンが瑠璃色の目を瞬かせた。

そして受けとった聖剣を見下ろして……「あいつを止めろ」と言った。お前が、と。


「止めろ、って」

「もう、先代魔王の自我はない。このままだと魔剣は亡霊ごと、“智の王”を喰い殺すぞ」

「!」

「魔剣ディアボロスを止められるのはお前しかいない……これは間違いないんだ」


でも、私……できるかな。もう、聖剣は手元にない。徒手空拳の状態なのに。

しかしレンはゆるぎない声で言った。

「できる」、と。


「っ何を根拠に」

「……そういえばお前、まだ俺の使い魔だったよなー」

「あ」


急激に頬が熱くなる。

唇に触れた感触を思い出して、私はますます赤くなる。

レンは黙り込んだ私を見て、ゆっくり甘く、微笑んだ。


「命令だ。行って来い」

「こんの…………っ、ああ、もうッ!!」


行ってやろうじゃないかこの鬼畜勇者め。もう腹は括った。怖がってもいいのなら……自分を飾らずに戦えるんだから。


刹那、黒い魔力の光が、白銀の光を食い潰した。

黒い渦に呑み込まれそうになった時、レンが聖剣を一振りした。

爆発音とともに、白銀の閃光が迸り、黒い光を一掃する。


操られた亡霊の、紅い目が瞬いた。

その隙をつくように、今度は数千もの細い白金の光が蜘蛛の巣のように拡がり、光の檻となって亡霊を拘束する。


「すご……すごいっ、レン!」


勇者が使うと、威力がやっぱり桁違いだ。


「はっはっはー。もっと崇め奉ってくれてもいいんだぞ」

「ごめん、今ので尊敬心が一気に萎えたかも」

「おい」


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