78、主従契約
私の手に、魔王の証である黒い炎が現れた。
超高熱の炎。強く念じれば念じるだけ、私の意のままに操れる。
「目の前の敵を、焼き尽くせ!!」
叫んだ瞬間、じゅわ! と音を立てながら、土人形があまりの熱に耐えられず、蒸発した。
後に残ったのは白い灰。
「……少しはやるようだ」
“ランスさんの声”が耳に届いたその瞬間、目の前が真っ白に染まった。
今度は、“妖の王”が手をこちらに向けていた。
淡い曙光を受けてきらめくダイヤモンドダストが吹き荒れ、凄まじい勢いの氷雪が私たちの肌を叩く。
寒い、を通り越して……痛い!!
そう思った刹那、青い光が目の前を通り過ぎて、吹雪が止んだ。代わりに、猛烈な勢いで白い煙が立ち上る。疾竜のドラゴンブレスが、“妖の王”の吹雪を防いでいるのだ。
でも……もう保たない!
私より先にそう判断したのはレンだった。
さっきの攻撃のせいで氷のように冷えた手で私を引き寄せると、聖剣を地面に突き立て、その陰に隠れる。
直後、ドラゴンブレスを吹雪が破った。
勢いを増した氷雪が、ブレスを吐いていた何体かの疾竜の体を氷漬けにする。
悲鳴を上げる間もなかった。刹那の家の私たちに到達した吹雪は、聖剣の結界で阻まれる。
白銀の壁が、軋む。
「いいか愛美、今から魔封じを解く」
「え? で、でも、それじゃ私はレンと一緒に戦うのが難しくなって、」
「大丈夫。聖力も魔力も全開にできる」
「え? それって、」
「…………あとから怒るなよ!!」
どういうこと、と聞く暇もなかった。
……直後に、私の唇を……レンが自身の口で塞いだからだ。
「なっ、ちょっ、れっ……!!」
「……っ俺はこの手首だ、聖剣を上手く振れない! 一時だけの簡易な主従関係だ、ほら早く!!」
呆然としながらも、私は聖剣に駆け寄る。
しかしその瞬間、吹雪が一気に勢いを強めた。
風属性の魔力。
“ランスさんの”竜巻を加えて、吹雪は今まさに結界すら破ろうとしている。
「はぁっ!!」
思いっきり聖剣を引き抜いて、一振り。
余計な邪念を振り払うべく、そして目の前の吹雪を吹き飛ばすべく。
……横薙ぎに一文字。
白銀の閃光が走った。




