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76、この炎は


黒い炎は纏っていない。正しい扱い方が出来ていないのだ。

……しかしこれではっきりした。ランスさんは、魔剣に近付くことすらできなかったのに、

彼は魔剣ディアボロスを手にしている。つまり、彼はやはり本物のランスさんではない。

そして魔剣を手にできる者は、私以外でたった一人……先代魔王だ。


「心にもない呼び方をしないで」

「ほう」

「私は、あなたの正体を知ってる。絶対に許さない……!」


アリシアさんに、処刑台にある、十字の柱に鎖で括り付けられる。レンも同様に、隣の柱に括り付けられた。


「フフ……むしろ、これで気づかない方が阿呆というものだろう」

「!」


口調が、変わった。それと同時に膨れ上がる殺気と、魔力。

急いでレンに目を向けたが、やはり気を失っているのか、目を覚ます気配がない。

次いでアリシアさんを見る。

しかし既に処刑台を降りてしまった彼女には、ランスさんの異変を気づいてもらう術はなかった。


「二つの黒を持った私の跡継ぎよ。勝手な行動をしてもらっては困る」

「……勝手な行動? 何言ってるの? あなたは先代勇者に倒された。もうあなたに出る幕はないと思うけど」


言い返すにも、声が震えた。怖くて、上手く舌が回らない。


「だからこそだ。私は勇者の一族を憎んでいる……滅ぼさねば気が済まん」

「それはあなたの勝手な都合でしょ! それに教会はあなたを裏切った」

「人間の教会との同盟までわかっていたとは。ただの阿呆ではないようだな」


魔剣ディアボロスが嘶くように、刃の部分に黒い魔力の渦が巻く。

“死”のイメージが、生々しく私の頭に刻みついていく。

怖い……やっぱり、怖いよ。こんなとこにいたくない。

誰か助けて。


「それに、勇者を滅ぼすのが私の都合だと言ったな」

「それが、何」

「果たして、本当にそうだろうか」


酷薄な笑みを湛えて、先代魔王の亡霊は広場を見下ろした。

とたん、開ける視界。

耳に届く、民衆の『死刑』コール。


「…………っ!」


私はあまりのショックで息が詰まった。


「わかっただろう? 人間を殲滅するというのは、何も私だけの野望ではないのだ」

「……っふざけんな!! 人間を悪だと定めたのは、あなたじゃない!!」


歴史を隠して! みんなを騙して!!

戦争を続けるために、全てを仕組んだ!

どれだけ沢山の命があなたのために、失われたと思ってるの!!?


「これはこれは。素晴らしい正義感だ」


先代魔王の亡霊は、魔剣の切っ先を私の心臓に向けた。

と、同時に、隣の柱のレンは、足元の薪に火をともされようとしていた。


「……反吐が出る」


____刹那。

私の脳内を、自分の体が魔剣に貫かれる映像が、何十回も駆け巡った。


ここで、死ぬ。

私は……ここで。


『何をしているのです!

気をしっかり持ちなさい、陛下!!』

「わっ!」

「、何!?」


次の瞬間、やってくると思っていた痛みはなかった。

恐る恐る目を開けると、紅く燃え、金色に輝く羽が目に入る。

……この炎は。


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