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75、処刑場

「まだわかんないよ? レンが聖剣アポロンを呼び出して、見事すぎる脱出ショーになるかもしれないじゃない」

「いや俺、今、手怪我してるんですけど」

「命と手とどっちが大事なの!?」


そりゃ命だけどさ、と唇を尖らせるレン。

私が「ついでに私のことも助けてね」と言うと、彼は意地の悪い笑顔で「さぁね」と返した。

そこは助けようぜ、王子様。


「なんか……お腹空いたなぁ」

「言うな。余計に腹減ってきた」


これから死ぬなら、空腹なんて関係ないけど。

あーあ、最後の晩餐くらい出してくれてもいいのに。

朕はお寿司をご所望だぞ。


「死にたく、ないな」

「……うん」


これが最期になるなら、せめて。

……私がレン、と彼の名を呼ぼうとすると、急速に睡魔が襲ってきた。くっつきそうな瞼に抗いながら、私の口は必死に何かを紡ごうとする。

しかしそれは叶わず、私は目を閉じるとすぐに眠りに落ちてしまった。


_____最後に、レンが。

「おやすみ」と囁いてくれた気がした。





……夢を、見た。

魔王城にいた時と同じような夢だ。

家族でご飯を食べている夢だ。私はまだ小さくて、祖母の隣に座っていて。

季節は冬だろうか。父母と祖母がいて、一緒に鍋を囲んでいる。

ああ、美味しそうだなぁ。キムチ鍋だ。どうしよう、食べたくなってきた。

あれ? 今から食べるんだっけ。でも、私は次期魔王で、もうすぐ処刑される身で。

でも、お鍋は目の前にあって……。


絡まる夢と現。

ここは思い出の中なのか、それとも。


「愛美」

「!」


いつの間にか、小さな私の隣に、祖父がいた。

若くて、“おじいちゃん”じゃない。しかも、顔には黒いモヤがかかっていて見えない。

けれど私にはわかった。彼が私の祖父だと。


「愛美。お前にはまだ、足りないものがある」

「え?」

「それを見つけなさい。自分を信じて」


顔がわからないのに、祖父が笑ったのがわかった。

足りないもの? 何それ。私に……?

そして、祖父の顔のモヤが、少しずつ晴れてゆき。それと同時に、景色は消えていき。

顔が、見えて_____。


いや……待って。教えて……、


「おじいちゃんッッ」


目の前で、光が弾けた。

そして、視界を通して脳に流れ込んでくる情報に、目が眩む。

煙の臭い。新鮮な空気の匂い。


「……処刑執行を目前にして居眠りですか。ずいぶん器が大きいのですね」

「あ、アリシア……さん」

「気安く名を呼ばないでください。反逆の王」


耳に届いたのは、綺麗な、そして冷たく澄んだ声。

その声でやっと私は、自分がどこにいるかを理解した。


……ここは、処刑場だ。

つまり……魔王城の前にある、広場である。

私は集まる民衆が避けていく中、処刑台に向かって歩いているのだ。


処刑台の前には、見覚えのある三つの姿。

豪華な椅子に腰かけて、鋭い視線を送ってくるのは……、四天王のうちの三人の王だ。

“獣の王”。

“死の王”。

“妖の王”。

彼らを見た時、一気に目の前の光景が現実感を増した。


「レン」


すぐそこには、どこかぐったりしたレンが、ランスさんの部下らしき魔族に連れられて歩いている。

気を失っているのか、眠っているのかすらわからない。

……ざわざわと、集まった国民の声が耳を刺す。


____『裏切り者』『けがらわしい』『美しい“黒”を汚す行為』


心無い悪態の数々は、私の心を確実に蝕んでいった。

違うのに。裏切り者は……先代魔王の方なのに。

悔しくて、涙が出てくる。

このまま死にたくない……! 死んでたまるか!

そう思うのに、足に力が入らない。


「来ましたね、“陛下”」

「……っっ」


処刑台の上で待っているのは、ランスさんの姿をした先代魔王の亡霊。

そして彼の手には……魔剣ディアボロス。


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