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72、考え

***



……次期魔王だったはずの少女と勇者が気を失い、竜の亡骸が横たわる洞窟で、“ランスロット”は冷たい声で言った。


「アリシア、魔王城へ帰還します」

「はっ、ランスロット閣下。……しかし気になることが一つあるのですが」

「なんです?」


魔族の中でも貴族家……伯爵の娘であり、圧倒的な力を持つアリシアでさえも、四天王を前にして、緊張を解けるはずがなかった。

体を固くし、強張った声音で告げる。


「竜が守護していたはずの、聖剣アポロンの姿が見えません。……いったいどこに、」


しかし彼はそれを意にも介さなかった。


「……いずれにせよ、勇者が持っていないのならば問題はない。早く用意を」

「……御意のままに」



***



……気がつけば、私は暗い牢獄の中にいた。

ハッとなって辺りを見回すと、手首と足首につけられた拘束具が目に入る。

……ここはスレイブヤード?

いや、違うか。恐らく、影夜国王都シャドウィングの中心にある私の城……魔王城だ。


「起きたか、愛美」

「……レン」


苦笑いが混じった声で、すぐそばから声がした。

泣きそうな思いでそちらを見ると、そこには同じように拘束されたレンがいた。

私達は、同じ牢に投獄されたらしい。

……唯一の救いは、レンにも私にもそこまでの外傷がなかったこと。どうせ死にゆくのだから、拷問や尋問などいらないということだろうか。それとも、かけらほど残った敬愛の気持ちの表れだろうか。

どちらでも構わない。

とりあえず……怪我が少なくてよかった。


「レン、背中……大丈夫?」

「ああ。青あざくらいにしかなってないと思う。微妙に……というか結構痛いけど」

「どっちなの?」

「痛いっす」


軽口のたたき合いで、少し気が楽になった。

まあ、同じ牢に入れられることは二回目だ。

そこまでパニックにならなくてもいいよね。


……不意に、レンが真剣な顔になって表情を引き締めた。

私が瞠目していると、彼は真剣な目を私に向けて問う。


「……どう思う?」

「どう思うって……何が?」

「何がって……“智の王”ランスロットの行動についてだよ」


ああ、と思いながら私は答えた。


「……あれは、ランスさんじゃない」

「!」


私の言葉にレンは目を丸くし息を吞んだが、すぐに元の表情に戻った。


「……その根拠は?」

「ランスさんは赤い瞳なんかじゃない。薄い黒の瞳なの。……それに、メイドさん達にまで癒しの魔術を使うような人が、アリシアさんがやられたとき、動揺しないわけがないよ」


しかしレンは苦い顔のままだった。


「その考えが、主観的なものでないという証拠は?」

「……ない」


問われた質問の答えは、『否』だった。

……でも、私にはどうしても信じられないのだ。

ランスさんは、私が勇者といたからって、問答無用に死刑にするような人じゃない。

竜を……魔物を非情に殺すような人じゃなかったはずだ。


「……俺も一つ考えたことがある」

「え? 何?」


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