69、裏切り
すると竜が尋ねてきた。
『次代の魔族の王よ。お前は勇者の何だ』
「えっ」
返事に困って、思わずレンの方を見てしまう。レンは私の方は振り向かず、ただ黙って竜を見ている。
確かに……私は、レンの何なんだろう。
修羅場を乗り越えた戦友? 利害の一致した相棒? 同じ目的のために戦う仲間?
……いや、違う。
私は今、こう答えたかった。
「友達です。私の一番、大切な」
……これから関係は変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。
宿の時感じた、不思議な感情が芽吹いたら、また何かが起きるかもしれない。
ただ、今は。
心の底からレンを友達だと、そう言いたかった。
『……そうか。それでは私は、お前の魔王就任を認めよう。若き女王よ』
「!」
私たちは揃って息を吞んだ。
……認めてくれた。最強の幻獣が、私たちを!
『お前たちは本当によく似ている。平和を愛した、初代の彼らに』
顔を見合わせる。それは、不死鳥にも言われたことだった。
似てる、のかな……私達。初代の、二人の王に。
……黙り込んでしまった私たちに、竜が優しく声をかけてくれた。
『さあ、私が上まで送ろう…………ムッ!!?』
しかしその、刹那。
空気を斬り裂いて飛んできた赤色の光弾が、着弾した。
「なんだ……この、強烈な魔力はッ……」
目を見開いて、レンが呆然と呟いた。
そんな間にも、まがまがしい血の色をした光の弾は次々と降ってきて、洞窟の壁や地面に着弾し、ところどころを大きく破壊していく。
『伏せているがよい、若き王たちよ!』
即座に私たちの前へ出た竜が、藍色の炎……ドラゴンブレスを上空に向かって吐き出す。
空気を焦がす熱気が、こちらにも届いた。しかし、レンの顔色は戻らない。
「まだ襲撃者はそこにいる!! 気を抜くな!!」
『ヌッ!?』
叫んだ声に竜が翼をはためかせようとするが、遅かった。
どこまでも残酷な赤をした光の弾が、ドラゴンブレスを弾いたそのままの勢いで、竜の体を貫いたのだ。
「きゃああああ!!?」
「竜ッッ!!」
ぐらりと巨体が傾いて、轟音と共に地面に沈む。
どうして、誰がこんなことを……!!?
倒れた竜に駆け寄りながら、私は上空を睨んだ。
____しかし。
「いくら幻獣とは言え、弱体化すればこんなものですか」
聞こえてきたのは、私のよく知っている声で。
「実に残念です、陛下。スレイブヤードの者を倒し、勇者と共に逃避行ですか。しかも挙句の果てに敵の王子を友だと仰る」
「ウソ、だろ……」
レンの唖然とした呟きに、愉悦をまじえてその声はこう言った。
「いいえ、全て現実です」
ならばなんて、残酷な現実なんだ。
「……ランス、さん」
____そう。
そこにいたのは、私の一の忠臣であり、信頼できる優しい魔族であるはずの。
滴る血より“真っ赤な目”をした、“智の王”ランスロットだったのだ。




