67、竜の王
そして。
ぐっ、と足を踏み出したその瞬間だった。
膨れ上がった魔力が、暴風となって私達を包み込んだのは。
「「うわっ!!?」」
凄まじい風に煽られ、私達はいとも簡単に吹き飛ばされる。こんな立っていられないほどの暴風。台風の暴風域の中にいるみたいだ。
『何奴だ』
____大地を揺るがすような、威厳が籠る低い声が頭の奥にきぃんと響いた。ずき、と脳の芯が痛むように、奥に確かに存在する“何か”の強さを悟る。
先に口を開いたのはレンだった。
「俺は、第12代目聖王の跡継ぎにして、現勇者のレオナード・ヴィフ・アルジャン!
初代魔王の石板を読み、真なる勇者としてここに来た!」
『何』
威厳の声に驚いたような色が交じる。
負けていられない。
「私は13代目魔王候補の、一ノ瀬愛美! 人間と魔族の戦争を終わらせるため、ここに来ました!」
『……成程』
ばさり、と翼が空気を叩く音がした。
風が再び起こり粉塵が舞い上がるが、私達は足を踏ん張ってその場で耐えた。
……1歩でも動けば負けだ。
ここで聖剣アポロンの守護獣である竜に認めてもらうことは、きっと何よりも強みになる。
『魔王と勇者。その立場の者達を見るのは、初代以来であろうな』
ふわりと、音を立てずに、目の前に着地するのは。
そばにいるだけで圧倒されような覇気を持った、巨大な幻獣。
___不死鳥と並ぶ、唯一無二の古代の魔物。
「すげ……これが竜の親玉か」
「……っ」
魔物と魔族の女王が私のはずなのに、腰が引けてしまう。
でも、どうしようもなく憧れる。私も、こんな、威厳に満ちた王になれれば……!
『よかろう。勇者と、次代の魔族の王よ。お前たちを資格を有する者と認めてやろう』
重厚な声で言いながら、竜は黄金の目をこちらに向けた。不死鳥と同じ、太陽のような色をした、力強い眸だ。
『真なる勇者を名乗るのならば、人間の国の王子よ、見事聖剣をその手にしてみるがよい。
だが出来なければその命、ないものと思ってもらおう』
「「えええええ!!?」」
ここには別に、聖剣を抜けるかどうか試しに来ただけであって、手に入れるために来たわけではないのに。
なぜなら今、レンは手首を怪我している。……そんな状態で、果たして聖剣アポロンを抜けるのだろうか。
「ちょっとまて竜! 俺達は別に聖剣が欲しいわけじゃ、」
『何か不服が?』
うわ……これ断れないやつだ____……ッッ!
私達は、2人で「どうする」と目で会話し合う。
しかしどうするかなんて議論しても、解決になんかならない。
逃げても死、失敗しても死ならば……、
「行けレン!」
「愛美お前無責任に、ちょっ、押すなバカおい、」
ごたごた言うな!
思いっきりレンの背中を押して、私は竜を睨みあげる。
『挑戦に異論はないようだな、若き魔王候補よ』
「ありません!」
見てなさい竜。レンはすごいんだから。
人間の王子で勇者で、白金色の髪で、聖力の術だって使えて、元日本人で、
顔がかっこよくて顔がかっこよくて顔がかっこいいんだから!!
……レンが言う。
「顔だけかよ!」
「耳悪いの!? 他も褒めたでしょ!」




