66、下へ
やばいやばい、“光盾”がなければ、私絶対に死んでた……。でも、あの時炎を出さなかったら、100%お陀仏だったはずだ。多分、判断は間違っていなかった。
「愛美! 止まれ、道の先がない!!」
「え?」
しかし、洞窟は私たちに心の余裕を与えてはくれなかった。……レンが私の手を引っ張ってくれたが、間に合わなかった。
そう。
……私が足を踏み出したところは、地面が無かったのだ。
「えっ、」
「うわっ」
しかも起こったことはそれだけではなかった。
走っていた地面がどんどん崩れ出して、私達の体は一気に自由落下状態に移行!
もちろん、転がっていた岩も一緒に。
「いやぁぁぁ!! 今度こそ死ぬぅぅうう!!!」
先の見えない暗闇の中にまっさかさま。まさに落ちる先は奈落の底だ。目に見える明かりは、レンの出してくれた“聖帝光”ただひとつ。
「レーーーーーン!!」
「だああああうるさいな!! わかってるから、静かにしてろっ!!」
「早くしてぇ!! 地面がもしかしたらすぐそこかもしれないよおおお!!」
駄目だ、口に出してしまったら、恐怖で吐きそうになる。
「くっそ、わかってるよ!!
____雲のごとく蒼穹に浮き、風のように大空を舞う。
翼を与えよ、
法術典項の三十四、“浮雲”」
その言葉が唱えられたと同時に、温かい空気に包まれるような感覚があり、私達は空中で静止した。
上の方を照らしていた光の玉……“聖帝光”がふわふわと下に降りてきて、私達の足元を照らす。
そして向こうの方で、大地が鳴動するほどの轟音が鳴り響いた。……きっとあの大岩が落ちた音だろう。地面は凹んでいるに違いない。
その音にビビりながら足元を見下ろすと。
その刹那、私達はこれ以上ないというほど蒼白になった。
……私達が浮いているのは、地面から1mもないところだったのである。
「これ……1秒でも遅れてたら死んでたやつ!!」
「やばいやばい……脳裏に天国見えてきた」
悪運が強いのか、弱いのか。
それとも罠にかかったのだから頭が悪いのか。
後者は認めたくないが。
「どうする愛美、とりあえず降りるか?」
「う、うん。そうだね」
レンが右手の指を鳴らして、私達を地面に下ろしてくれる。
足が硬い地面に着くと、ドッと肩の力が抜けた。
ああ……怖かった……今度こそ終わりだと思った…。
「…これは」
すると揺蕩う淡い光の中、レンの顔色が変わった。そして、彼は落ちたところの奥深く……深い闇のところを見る。
「濃い、聖力と……魔力の気配。一つは…多分、竜のだ。もう一つは……」
「____聖剣アポロンの、聖力」
呟いたその瞬間、腕に鳥肌が立った。
レンの魔封じを受けていてもなお、感じる聖なる力。
私達魔族(?)のもつ魔力とは、正反対の清める力。
「この奥に……聖剣アポロンがある……っ」
レンの絞り出すような声に、私は唾を飲み下した。
……そうだ。目的のものはすぐそこに……目の前にある。この目で見ないことには、引き返すことはできない。
「行くぞ、愛美」
「……うん」
ついに見るんだ。
あの、禍々しいまでの力を持った魔剣ディアボロスと対になる剣、
聖剣アポロンを。




