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63、強襲

「レン、ここに幻獣……不死鳥みたいな強い魔物がいるなら、どんなのだと思う?」

「それは俺が聞きたいくらいだよ。こんな体調で聖剣を取りに行けるのか、甚だ不安だ」


大きく息をつきながら、額の汗をぬぐうレン。

確かに、基本的にいつでも涼しい顔をしているレンだが、今はスレイブヤードにいた時と同じくらい顔色が良くない。


「それに、洞窟をねぐらにされてたら、やばいぞ……」

「え?」

「教会が試合までして、聖剣を手に入れられる人材を作ろうとしたのは、ここら辺に棲む魔物のせいでもあるかもしれない」

「どうして?」

「魔物が強すぎて、きっと聖剣を取りに行くこともできなかったんだ。教会側にある戦力では足りなくて、藁にもすがる思いだったんじゃないのか」


そっか……そりゃ、確かに何も知らなくて強い人間に情報を渡すでもいいけど、身内で聖剣を手に入れて、歴史を秘匿する他に魔族もついでに倒してしまえば、ラッキーってことだ。


「____ッ!」

「レン!?」


突如、レンが弾かれたように顔を上げた。

あわててそれに倣って上を向くと、そこにはエメラルドグリーンの鱗を持った……、


(ドラゴン)!?


「やばいっ……マジでいやがった、あれ…疾竜(ワイバーン)だ!!」


ワイバーンってなに、ドラゴンと何が違うのー!? という質問を口に出す暇も無かった。

どうやら、私は竜達に侵入者とみなされたらしい。

上空に舞った全長3mほどの竜が、こちらに向かって口を大きく開けて____、


「「どわぁぁぁあ!!?」」


凄まじい炎を吐き出したのだ。

蒼い炎は草木に凄まじい勢いで燃え移り、広がっていく。風で巻き上げられた火の粉と粉塵が、フーデッドケープを叩いた。


「逃げろぉぉぉ!!!」

「言われなくともぉぉぉ!!!」


前も後ろもわからずに、とりあえず森の奥深くへと全力でダッシュする。

その間にも、疾竜はこちらに向かって炎を吐き出しており、まったくもって心が休まらない。

これが本物のドラゴンブレス!

全然違う! 竜人のと全然違うっっ!!

オリジナル強すぎでしょ……不死鳥と同じレベルの幻獣なだけあるよ。死ぬ。ガチで死ぬ!!


「っはぁ……、法術典項の三、“光盾”っ」


レンが苦しまぎれに放った光が、私達を包む。

この鎧で、あの炎をが防げるとは思えないけど、火の粉による二次被害は防げるかもしれない。

とりあえず走らなくちゃ!!

草木をかき分け、二人で思いっきり走る。

さっきから、背の低い植物の葉やら枝やらに、足が傷つけられて痛い。上げそうになる声を我慢しながら進む。

しかしきっとレンはもっとツラい。魔力の満ちるこの森で、聖力を使った術を使ってるんだから。私が弱音を吐けるものか。


「愛美! 来るぞ!!」


レンの声に私は立ち止まり、バッ、と上空を見上げる。そこには口を大きく開けて、こちらを睨む疾竜。

ここからじゃ避けきれないと感じた瞬間に、“死”という文字が脳裏を横切った。


……いや! ここで負けるな。

魔王になるんなら……私はレンと並べるくらい強くならなくちゃいけないんだ!


「黒き炎よ!」


私は叫んで、右手を空に突き出した。

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