表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/93

57、優勝

____あるいはそれは、レンの声だったのかもしれないし、私自身の心の声だったのかもしれない。

けれど私はその言葉をきっかけとして、渾身の力で隊長の剣を私の剣で押した。


一瞬、離れる2人の距離。

刹那の時間に、私は剣の柄を握る手に力を込め、狙う場所を見極める。

向こうから見れば、私の体はゆらりと揺らめいたように見えただろう。


「____ハァァっっ!!!」


烈帛の気合を発し、私は握った剣を隊長の喉元に、思いっきり突き出した。

寸前に切っ先を少しずらし、防具で覆った箇所を打ち据える。

どぉッ、という音がして、私の突きを喰らった隊長の体が、少し舞い上がり。……そして、足が少しリングに引っかかりながらも、彼は人工海に落ちた。


沸き起こる歓声。


「ラアッ!!」


今度は向こうの方で気合が発され、人が倒れる音がする。

次いで、シャキィン! とレイピアを鞘に仕舞う音。

どうやらあちらでも決着がついたようだ。


____ゴォンン!!


ゴングの音に、私は実況席であるバルコニーを見上げる。実況者のお姉さんは、興奮したようすでマイクを持つと、まくしたてた。


『な、な、なんとぉー!

このバトルロイヤルでは最有力候補だと思われた聖王騎士団を破り、最後に立っていたのはこの2人!しかも同じチームです!! 素晴らしい!!

皆様ご存知の通り、この若い2人は、1回戦でも高得点をマークし、この最終戦に臨んでいます!

文武両道とは、まさにこのこと!!』


いやあれ、米の炊き方だから……。

深い意味なんてまったくもってなかったから……。

文武両道だとしたら、それはレンだけだから……。


あえて口には出さないが、心の中でさえ何も言わないままだと、罪悪感にビシビシ響くので、心の中でだけ言う。


『それではこの私が、僭越ながら、教会より預からせていただいていた、聖剣の地図と歴史を刻む石板を、若き2人にお渡ししましょう!!』


お姉さんがバルコニーから身を乗り出し、一気に跳躍する。

おおお! とどよめく観客の声の中、お姉さんは見事に私たちのいるリングに着地を決めた。


おい……バルコニー……高さ5mはあるぞ。

このお姉さんが、選手の中で1番強かったんじゃないの……?

疑惑を目を向けている私とレンに気付かずに、お姉さんが古びた紙と、黒い石板を持ってくる。古びた紙は地図だろう。B5サイズくらいか。そして石板は25cm四方くらいだろうか。石碑よりずっと小さい。ギリギリバックに入るサイズだ。


マイクを外したお姉さんが、私達の前に立つ。

そしてニコッと笑うと、こちらへ寄って来るように目配せしてくる。

私はレンを地図と石板を受け取るように促した。レンは軽く頷くと、一歩前に踏み出して。


ピシッ……カシャァン……ッ


____え?

ささやかだが、確かに何かが壊れる音がした。

あわててレンの方を見ると、彼は屈んで自分の足元に落ちたモノを拾い上げた。

手にあったのは、割れた色つき眼鏡の破片。

やばいっ! もし瞳の色がバレたら……!

焦ってお姉さんの顔を見るが、彼女はにこやかな笑顔のまま、その場で立っていた。


……どうやら、瞳の色はバレていないようだ。ほっと息をつく。

でもなんで、いきなりかけていた眼鏡が落ちたんだろう……?

レンは若干顔を伏せながら、再びお姉さんの正面に立った。


「これが、優勝賞品の、聖剣の洞窟の在り処を示す地図、そして歴史の石板です」


お姉さんが差し出した2つのものを、レンは顔を伏せたまま受け取る。

そして顔を伏せたまま、ゆっくりとお辞儀をした。

再びの歓声。


……うん、そこでお辞儀は不自然じゃない。さすがレンだ。ハラハラしながらも、私はお姉さんとレンの行動を見守る。

お姉さんはマイクをつけると、リングの中央で、観客席に向かって笑顔を見せる。


『皆様、今回の優勝チームに、大きな拍手を!!』


その言葉を合図にして、闘技場には怒涛の拍手が巻き起こる。

降り注ぐ歓声とクラップ音に目を細めながら、私はレンに歩み寄った。神妙な顔で眼鏡を見つめていたレンが、少しだけ頬を緩ませる。

そして少し眩しそうに、観客席を見上げた。私もつられて上を見ると、……あはは、スタンディングオベーションなんてしてる。


「良かったね、レン」

「ああ。……これで、聖剣を取りに向かえる」


……しかし。

試合の結果に満足していた私たちは、気づかなかった。


目の前のお姉さんの金髪の間から、焦げ茶色の髪がのぞいていたことに____。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ