53、お米は大トリ
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「どうだった?」
例の武器置場の小部屋ではなく、今度は私達選手は控室に集まっていた。
そこでレンが私にそう問うた。私はふっと微笑む。
「……愚問ね」
「だろうな」
レンは腕を組んで苦い顔をした。
理解力があるようで何よりである。
「さて、どうするか……聖剣の地図が手に入れられないとなると、まずいな。
……とってもまずいな」
優勝したチームを待ち伏せして奪うか、交渉するか、脅すか……。
と、実に物騒な考えを展開するレン。
それ、完璧に勇者のする思考じゃないよね。むしろ魔族の方が持ってそうな思考回路だよね!
「冗談だよ」
私の蒼白な顔色を察してか、レンが薄く笑う。
ごめん、今の悪い顔のレンは信用できないや。というより信じてはいけない気がするんだ。
……すると唐突に、控室にあの例の実況のお姉さんの声が響いた。
『選手の皆様。我が聖ミスリル統一王国を代表する歴史研究家の方々が到着しましたので、リングの上にお越しくださーい! これより、選手の皆様の解答を、リング上で解説を踏まえながら採点していただきまーす!』
元気だなぁ、このお姉さん……。
私は既に疲れ切っているというのに。
____そして出場者が集められたリングには、どうみても闘技場には似合わない、学者さん風のおじさま方が何人もいた。
リング上に置かれた長机の上に解答用紙らしき紙束が乗っていて、古式の拡声器は一番年配の人の前に置いてある。
こんなところに、お偉いさん(?)連れてくるとか、どんだけですか教会……。
ちなみに解答の採点は、選手たちの目の前で行うらしい。お姉さんが解答の採点の順番を番号で読み上げていく。
すると読み上げられた順番レンは最初の方、私は正真正銘の最後だった。
Oh、ジーザス。
神様、私は何か悪い事でもしたでしょうか。
なんでご飯の炊き方がトリになるんですか。
私が泣きそうになっている間に、採点は進んでいく。
……騎士さんたちはやはりだいたいの人が点数が低いようで、それだけは助かった。貴族の子息の中でも、あまり学に興味を示さなかった人が前線に出てきている訳だしね。
「あ、次俺だ」
さらりと呟いて、私が何か反応する前に、レンが年配の学者さんの前に立つ。
もちろん、失礼にならない程度に顔は伏せながら。
そして、威厳のある表情をしていた学者さんが、レンの解答を手に取った。
その視線が下に下がっていくにつれて、感心するような表情になっていく。
おお、これはいい兆候じゃない……!?
「これは、素晴らしい解答ですな」
拡声器から漏れた感嘆の声に、観客席がどよめく。
「……正確無比な歴史の描写。教科書や高度な学術書を読んでいるようだ。
なんて知識……間違いなく最高得点だ」
おおおおお…………!!
さすが勇者! さすが王子!!
餅は餅屋って言うしね! 自分の治めるようになる国の歴史なんて、把握してるに決まってるよね!
……でもごめん、レン。
私がご飯の炊き方を書いたので、落選なんだよね……。
……そして。ついに私の番がやってきた。つまりラスト、大トリである。
レンは今にも深いため息をつきたそうな顔をしているが、今一番その顔をしたいのは私だということをわかってほしい。
だって考えてもみて。
同じチームの人が最高得点なのに、私は零点なんだよ? しかも内容はお米だよ?
この時点で私は人工海に飛び込んでしまいたいくらいだ。




