43、血の主従契約
____そして。
「……法術典項の一、“聖帝光”」
「ひぎゃあああああっっ!?」
目覚めは最悪だった。
すさまじい光を直射され、微睡み中だった私は、びっくりして飛び起きた。
そして、光を発した犯人を睨みつける。
「ちょっとレン! 何するのー!」
「何するのー、じゃない!!」
しかし犯人……レンは、怒りながら言った。
「今何時だと思ってるんだ! 昼前だぞ!!」
「昼前ならいいじゃない、学校がせっかくないんだから!!」
「学校はもともとないから!! もうチェックアウトの時間だよ、バカ! このバカ!!」
「バカバカ連呼するなバカ!!」
カリカリしてばっかりだと、年取ってから皺増えるぞ。ぶつぶつ言いながら、私はベッドから降りる。
「朝食は取ってもらってあるから、さっさと着替えろバカ!」
「だからバカ言うな!!」
怒声を叩きつけてから、制服に着替え、かつらを装着して、部屋のカーテンを開ける。
確かに日が高い。正午ではなさそうだから、10半頃ってところだろう。
休日、部活がないときはもっと寝てるよ私。
そう唇を尖らせながら色つき眼鏡をかける。
……とりあえず、レンの記憶から私の寝顔を消去したい。
「ふぁぁ……」
「マナミさん、よく眠れたかい」
食堂に行くと、料理人さんが声をかけてくれる。
レンはチェックアウトの手続き中だから、私は料理人さんの料理の様子が見えるカウンター席に座った。
そして、取り置いてもらっていた皿を受け取る。
朝食はカボチャペーストのホットサンドらしい。私が寝坊したせいで冷めてはいたが、それでも美味しいことには変わりなかった。
「ごちそうさま」
席を立ち、笑顔であいさつ。そろそろチェックアウト手続きも終わっただろう。
料理人さん、できたてを食べられなくてごめんなさい。戦争が終わったら、また来るからね。
レンとともに再び街に出る。今度の目的地は港だ。
地図を見たところ、王都行の船は、西端の小さな港から出ているらしい。
船旅はどうやら2日程度で済むそうだ。
「街も、夜とはまた違った活気があるねえ」
「中立区域は、戦時では多分一番平和な場所なんだ。昔から魔族も人間も、差別なく暮らしてる場所だから」
確かに、人間の売り子のそばに風精がいたり、旅芸人のようないでたちの集団には、悪魔の羽が生えた魔族や人間のほかに、炎を纏う赤獅子がいたりする。
シャドウィングも、ここみたいに、気軽に人間が観光に来れる街にしたい。
あんなに綺麗な街並みなんだ。
魔族だけで独占していてはもったいない。
あ、それにしてもそろそろ港なのだろうか。潮のにおいがする。
そんなことを思いながら、私はレンに聞いた。
「ねぇレン、人間も魔物を使役したりできるの?」
「使役?」
聞き返してくるレンに、私は頷く。
街でも、魔物をそばに置いていた人たちを何人か見た。
聖力があるレンのような人間でも、魔族のように、魔物を使役できたりするのだろうか。
「まぁ、できるっちゃできるよ。魔族とは違って、儀式がやたら面倒だし、使役というより契約だけど」
「儀式があるの?」
「ああ。魔法陣を描いて、呪文を唱えて、血を1滴ずつ、東西南北に垂らして、それからは集中してその魔物に呼び掛けるんだ。
……それでも、何日集中して呼びかけても位や力が強い魔物は、従わない場合もあるから、人間はあまり契約しようとしない」
ただ、とレンは付け加えた。
「人間は、魔族とも主従契約を結ぶことができる」




