表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/93

40、街に到着

そ、そんなものなのかな……。

それなら、いいけど。でもやっぱり少し心配だ。


「不死鳥、あとどのくらいで中立区域の街に着くの? レンの手当をしたくて」

『そろそろです。飛ばした方が良いのならば飛ばしますが』

「レンごめんなさい。もう少し待って下さい」


また気絶するのは御免だ。


「それはいいけどお前、金はあるのか? 宿に泊まるにも金が必要だろ」

「たっ……確かにそうだね!すっかり忘れてた……どうしよ……」


牢屋に入って、やっとの思いで逃げ出してきたのに、野宿は勘弁してもらいたいものだ。精神的にも肉体的にもキツイ。


「……しょうがないな。俺の服のボタンを1つ2つ売るか」

「ボタンがお金になるの?」

「まぁな。この服のボタン、水晶で出来てるんだよ」


水晶!

確かに、金や宝石ほどの値段はないけど、クリスタルならお金になるかもしれない。


「レンありがとう! よろしくお願いします!!」





____そして、気が付けば。

日はすっかり沈み、空は暗くなり、星々が瞬き始めた。

車がないこの世界はまだ空気が綺麗で、都市の明かりも少ないからか、夜空が美しい。

アシュタロスでも、夜には綺麗な星が見えるんだな。……そう思うと、意味もなくホッとする。


『陛下。中立区域です』


不死鳥の声に、私はおそるおそるだが顔の位置を動かし、向こうの方を見てみる。

目に入ったのは、活気のある市場と、建物。

人の様子はまだ上空からじゃよく見えないが、その数で、賑わっている町だということはわかる。


『ここでは私は目立ちます。手前の森に降りるので、用意をしていなさい、陛下、そして勇者』

「はーい」

「了解」


素直に返事をして、私はフーデッドケープを着直し、かつらと眼鏡を整えた。

森の中に私たちを降ろし、彼方へ飛んで行った不死鳥にお礼を言うと、私たちは中立区域の街へ進み始めた。

森はそう規模の大きくないものらしく、ここまでも人々の声が届く。


「ああー……やっと宿で休めるぅ……ほんとに疲れたよね、レン」

「俺なんか1カ月以上牢屋暮らしだぞ。やっとベッドで休めるー……」


緩みきったレンの顔を見て、思わず吹き出す。


「あは、レン、顔間抜け」

「うるさい」


少し照れたように言い返してくるレンに、私の顔もほころぶ。

……そりゃ、疲れるよね。ずっと暗い牢に一人でにいただなんて、考えるだけでもぞっとする。

私だったら泣いてばかりだ。きっと。


「愛美。森の出口だ」


レンが、広い獣道が途切れ、光が漏れているところを指さして言った。


「うわぁ……!」


森から出たところは、異国情緒あふれる市場。

シャドウィングの街並みを中世ヨーロッパ風と喩えるならば、この市場は少しアジアっぽい。


「とりあえず、ボタンは2つで1万Rで売れた」

「1万リル? それ、日本円にしたら何円くらい?」

「1Rが3円くらいだからな……3万くらいだよ。宿代には十分だな」


3万円!

さぞ上等な水晶だったんだろうなあ。

……そりゃそうか、王子様の服についてるクリスタルだもんね。

私の持ってるローズクォーツのブレスレットとか、1000円くらいしかしないし。


「あ、そうそう。宿で夕飯食べる前に、買い物していいか?」

「いいけど、何買うの?」

「お前と同じ、フーデッドケープ。この髪じゃ目立ってしょうがない」


そう言うと、レンは自分のプラチナブロンドの前髪を、苦い顔でつまんで見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ