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37、なんだ、これ

すると、私の思考を読んだようにレンが言う。


「けど、聖剣アポロンは魔剣と違って、今まで誰にも使われていないんだよ。歴代勇者すら、その姿を見た者はいない。先代魔王を討った父も、聖剣ではない剣を使ってたんだ」

「ええっ! じゃあ先代の勇者様は、聖剣なしで、魔剣を使う先代魔王を倒したってこと?」


なんだそのチートは。


「……いや、今考えると、それは先代が正しく魔剣を使ってなかったからなのかもしれないな」

「そっか。石碑はここにあるんだもんね」


これが本物なら、先代魔王は魔剣を正しく扱えることが出来なかったってことだ。

そりゃ負ける可能性もあるか。私にはよくわからないけど、そういうことは。


「で、聖剣はどこにあるの?」

「……東大島のどこかにある、洞窟にあると言われてる。だけど場所がわからないから、それを見つけるにも1回王都に戻る必要はあるな」

「でも、とりあえずは、私たちの目標は聖剣アポロンってことでいいんだね?」


聖ミスリル統一王国の王都へ行き、聖剣のある場所をつかみ、またこの東大島に戻ってくる。

そして洞窟で聖剣を見つける。剣自体は捨て置くけど、石碑があればラッキー、みたいな。

……なんか、こうやって表現するとノリ軽いな。


「……でも愛美はいいのか?」

「は? 何が」

「別にお前は聖剣を探すことにまでついてくる必要はないよな。だって、お前の目的は王都を訪ねることなんだろ?」

「……わかってないなあ」


私が王都へ向かうのは、戦争をやめる為の手がかりを見つけるためだ。

その道中で、トラブルはあったものの、その手がかりらしきものを発見できたというのに、ここまで来てノコノコ魔王城に戻れるわけがないじゃないか。


「知りたいことはたくさんある。せっかくこんなものが見つかったのに、途中で引き下がるなんて嫌だよ」


私は神聖文字の石碑を見上げた。

……ランスさんだって、記憶がないまま休戦協定を破棄したことになっていて、困惑している。

当然影夜国の王都の人だって、戦争が好きなわけじゃない。だけど、人間を意味もなく憎んでる。

初代魔王陛下と人間の始祖王が、友好な関係だった可能性もあるのに、その証拠を魔王になるかもしれない私が見逃してどうするんだ。

本当は、憎み合わないでいいはずの種族同士だったら、どうしてくれるんだ。

死なないでいいはずの兵士たちがこれ以上亡くなっていったら、誰が責任を負うんだ。

亡くなっていった人々は、誰が慰めるんだ!


……そして何より、私が戦争を止めたいのは皆のためもあるけど、ほとんどが自分のためだ。

もう二度と、炎に追われるとか、矢が飛んでくるとかなんて御免だし、大けがした兵士が苦しむ様子とか、見たくない。

怖いのも嫌だ。痛いのも嫌だ。

でも、それを、何の罪もない人が経験するのは、もっと嫌だ……!!


「レン、迷惑はかけないから。私も聖剣を探しに行く!」

「愛美……」

「あ、その! 絶対とは、その……言いきれないかも、だけど……」


むしろ全力で迷惑をかけるような気しかしないけれども。

……それでも、私、頑張るから。

それに私は、インターハイにも出た剣士なんだから。全く戦えないというわけではないし。


「迷惑だなんて、思ってない。愛美が日本人だからかな……やっぱりホッとするんだよ。本当の自分でいられる気がしてさ。

……ハハ、なんか俺、初めての仲間を手に入れたみたいだな」

「魔王が勇者のパーティーの一人目とか、寂しいね!」

「余計なお世話だよ。しかも寂しいというかぶっ飛んでるからな」


そう言うとレンは唇を緩ませる。

不意にとくん、と心臓が跳ねた。


ん? ……なんだこれ。


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