36、証拠を増やせ
「……なあ、愛美。お前は、初代魔王のことをどんな人だと聞いた?」
「……誰よりも平和を好む、優しくて温和な人だと。肖像画も見たけど、私みたいな黒髪の、優しそうな男の人だったよ。
ただ……」
私は魔王城で見た、初代魔王陛下……始祖様の肖像画を思い出す。
確か、端が不自然に破られていたんだよね……。
「俺も聖王陛下の肖像画を見たことがある。
黒髪ではなく、金髪の青年だったが、やっぱり戦いを好む人には見えなかった。……なんでこの人は、魔族と仲違いしたんだろうと思ったよ」
「それな」
「あ、それ懐かしいな」
私が同意の意を示すと、緊張気味だったレンの表情が緩む。
つられてこっちの表情も緩んだ。
「……もしかしたら聖王陛下は、神聖文字も読める魔王に、真の魔剣の使い方を示したのかもしれないな」
「……どういうこと?」
レンの言うことの意味がいまいちわからない。
そんな私に、レンは笑って説明する。
「これはパターン2の仮説を膨らませたものだけどさ。神聖文字が読めるってことは、その魔王は人間王と親密な関係にあるってことだろ?
神聖文字を扱えるのは王族のみだから、よほど仲良くならなくちゃ石碑の文字は読めない」
「た、確かにそうだね」
「でも、逆に読めたら、二つの種族は戦争なんてしてないことになる」
そ、そうか。
突拍子もない推理だけど、確かに筋は通っている。レンの説明では、まだわからないことだらけだが、これだけは言える。
これを証拠として持って帰れば、始祖の時代、魔王と人間王は友好な関係にあったと証明できる。
つまり……停戦、いや終戦のきっかけになる!
「……でもやっぱり、わからないな。友好の意を示すために、初代魔王が聖王陛下に魔剣の使い方を教えたのなら、わざわざ聖王陛下は石碑に記して残すか?」
「それに、友好だったなら、どうして今戦争なんかしてるの? ランスさんは、もう理由なんか忘れてしまったくらい、長い間戦ってたって言ってた。聖ミスリル統一王国が出来た時からは、もう激戦だったって。それが今でも続いてるんだって」
……考えても考えても、やっぱりわからない。
二種族の他に、やっぱり他の脅威があったの?
それのせいで仲違いしたの?
……思考は堂々巡りだ。
それなら、今ここにある情報を持ち帰るしかないのだろうか。
「だけど、停戦に持ち込む証拠に、魔剣の情報だけでは足りない」
そのために、聖剣の情報も手に入れたい。
と、レンはそう言った。
「聖剣の情報…って、どういうこと?」
聞きながら、私は聖剣なんてあるんだ、と少しワクワクしていた。
……聖剣といえば勇者の最終アイテム、ゲームじゃぜひとも手に入れたいモノだ。
そりゃ、魔剣があれば、聖剣もあるよね。
そんな私に気付かずレンは続ける。
「聖剣の真の扱い方の石碑も、悪魔文字で書かれてる可能性があるからだよ」
「つまり?」
「もし本当に聖剣の真の扱い方の石碑があって、それが悪魔文字で記されていたら、始祖の時代の二種族の友好の、より強い証拠になるよな」
なるほど。
証拠は、少ないより多い方がいいよね。
確かに同じような証拠が2つあれば、捏造を疑われることも少なくなるだろう。
でも肝心は、その石碑がどこにあるかだ。




