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28、何故ここにいるのか

「ええと、レンさんは、どうしてここに」

「だから、レンでいいって。敬語もいらない。同じ年なんだろ。俺も一ノ瀬……いや、面倒だから愛美でいいな。ここ日本じゃないし」


そう言ってレンさ……レンはニッコリ笑う。

ひええ。整った顔で微笑まれて、私のハートは撃ち抜かれそうだ。


「俺は中3で病気で死んだんだ。それで、気が付いたら金髪碧眼の王子様になってた。……まったく、笑えない冗談だよな。しかも、魔王も勇者もいるファンタジーときたもんだから」

「ほんと……って、中3? なんだぁ、年下かあ」


少し緊張がほどける。

まとう空気が大人っぽかったから、タメ口に抵抗があったけど、もう大丈夫そうだ。


「いや、年下じゃないから。16だって。前世と合わせれば31」

「えっ、31!? そんなにおじさんなの、レン」

「だから、それは合計であって」

「じゃあやっぱり年下じゃないの?」

「16だっつってんだろ!?」


今まで穏やかに話していたレンさんが、思いっきりツッコミを入れてきた。

……なんだろう、この懐かしい感覚。

一気に緊張が吹っ飛び、まるで美咲先輩と一緒にいるかのようだ。この人も実は、ツッコミ気質なのかもしれない。


「……まったく……新しい魔王はただのアホなのか……?」

「あっ、ひどい! 私これでも、私立以詰面学園の生徒なんだからね!」

「げっ! あの超進学校の!? ウソだろ……」


まるで珍獣を見るような目で見られているが、私は屈しない。

特に優秀というわけでもないが、私はあそこでも落ちこぼれではないぞ。


「……まぁいいけど。愛美は、どうしてここに来たんだよ?」

「私は交通事故に遭って、ここに。レンが亡くなってるって言うなら、私も死んだのかもね」

「……そういうことなら恐らくそうだろうな。それで、その黒髪黒目で魔族たちに祀り上げられて、魔王になったってわけか。……お前も大変だなぁ」


あ、さり気なくだけど、『君』が『お前』呼ばわりになった。とんだ猫かぶり王子様である。

美しいのは顔だけか。心根が美しくなくて王様なんか務まるのか?


「それで、魔力はあるのか?」

「一応、黒い炎は操れたみたいだけど…まだよくわからないかな。レンは勇者としてアルフレッドさ……“獣の王”に挑んだの?」

「いや、中央海原の海戦の和解交渉に行っただけだ。……ま、それでいろいろあってここにいるってわけだな」


少し話しづらそうにレンは私から目をそらす。

ガシャン、と少しだけ鎖が金属音をたて、胸が痛んだ。

レンも、元日本人なら、ずっと平和に過ごしてきたはずだ。

それなのに、いきなり“勇者”になって……。

やはり、私達の理解者は私達しかいないだろう。


「それで? 魔王である愛美サマはどうしてこんな監獄に?」

「……ねえ王子サマ、その言葉が皮肉にしか聞こえないんだけど、どうすればいいんだろう」

「気のせいじゃないか」


ちくしょー、いけしゃあしゃあと……。

どうせ私はお間抜けな新前魔王ですよ……。


「私は、戦争を止めに来たくて……」

「………戦争を?」

「その為には、この目でスレイブヤードを見なくちゃいけないと思ったの」


働かされ、こき使われる人間たちの捕虜。

それは、きっと悲しくおぞましい場所。

けれど、私が戦争を止めるならば、それも見届けなくてはいけない。でないと、私の全ての考えは綺麗事で済まされてしまう。


「レン。私はまだ、昨日アシュタロトに来たばかりで、次期魔王になる覚悟が決まってない。

でもね、これだけは言える。これ以上、戦争の犠牲を出したくない……!

過去の確執を知らない私じゃ、終戦には無理があるかもしれない。でも、休戦……いや、停戦協定の締結なら…私にでもできるかもしれない!

……力を貸してくれませんか?」

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