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25、新米魔王、捕虜になる

『いいえ、ここは東大島の最北端の港、“旅人岬”です』

「えっ、獣王領じゃないの?」

『やはり、魔族の土地へ入ると、無駄に騒がれますからね。……騒乱よりは静寂の方が好ましいものです』


さ、さいですか……。

さすが古代幻獣・不死鳥、拘りってものがあるんだね。


「で、でも……ここが東大島の最北端なら、どうやってスレイブヤードに行けばいいの?」

『ここは、元々人間の土地ですから……私には土地勘はあまりありませんが、そうですね。この港町は小さく、また、大きな道は一本道ですから……南へまっすぐ行けば獣王領に行けるでしょう』

「わ、わかった!」


南へまっすぐ、南へまっすぐ……と、何度も反芻する私を見て、不死鳥が少し笑った……ような気がした。


『やはり貴女を魔王として認めたのは間違いではなかったようです』

「え?」

『まだまだ未熟ですが……貴女こそ魔族の女王に相応しい』


唐突でまっすぐな賞賛に、戸惑う。

そして黒い炎を纏う不死鳥は言った。


『争いを止めたいのなら、歴史を知ると良いでしょう。それが私からの助言です、陛下』



____歴史を知りなさいと、不死鳥は言ってたけど。……どうやって知ればいいんだろう?

私、出てきちゃったし、城。

ここにいないランスさんには歴史のことなんか聞けないし。

ああああ、もう! どうすればいいってのよー!


無人の町並みをあちこち見ながら、私は石畳の道を歩く。人が住んでたら、きっと賑わっていたんだろうな。

まるで地中海みたいな町並みだから、観光地とかにいいと思うんだけど。

でもまぁ、旅人岬、なんて名前がついているくらいなんだから、きっと昔は……戦争をしてなかった時は、旅人たちで賑わっていたのだろう。


「あ、見えた……あれが、“獣の王”の領地に入れる門かぁ」


呟いて、私はフーデッドケープとかつらを押さえる。……黒い髪、はみ出してないよね?


よし、と気を引き締めて私は息を整える。

門のところには、鱗や翼を持つ悪魔……いや、魔族の人が槍を手にして立っていた。

魔族と魔物のハーフみたいな人なのかな?

見たところ、竜人、って感じがするけど。


「……さあ、行くかッ」


短く息をついて、門へ向かって1歩を踏み出___……

せなかった。


「……ええぇぇぇ!!?」


……何故ならば。

門番の竜人さんが、突如私の足元に向かって炎を吐いたからである。

うわぉ、リアルドラゴンブレス……じゃないでしょ!

フーデッドケープのフードが爆風で脱げて、ブロンドの髪が肩にこぼれた。

よ、良かった。かつらはズレなかったみたい……、

と安堵する暇は私には与えられなかった。


今度は竜人さんが、私に向かってまっすぐ槍を突き出したからだ。


な、ななな、なんなのなんなの?

まだ私、“獣の王”の領地に不法侵入(?)してないよね?

し、しかも一応私は、魔王様なわけでして……って今はそれをバラす訳にはいかないんだけど。ここでもし正体をバラせば、きっとランスさんに連絡が行く。

そうすれば、瞬間移動ができるランスさんにすぐに城へ連れ戻されてしまうだろう。それでは、あんなに怖い思いをしてまでここま来た意味がなくなってしまう。


「そのブロンドの髪、貴様、人間だな!?」

「は、はい!」


……あ、しまった。

条件反射で答えちゃったけど、良かったのかな。

人間だけど、魔族で、でも魔術なんて使えなくて、でも魔王で……。

ああ、また混乱してきた。


「何故人間が勝手に、旅人岬に出入りしている!?」

「えっ? だって、ここ、中立区域じゃ」

「先日“獣の王”アルフレッド閣下の領地となったはずだ!」


不死鳥コノヤロぉぉぉ!!!


「両手を上げてこちらへ来い! 貴様をスレイブヤードに連行する!」


____と、いうわけで。

魔王様(仮)な私は、旅を始めて早々に、臣下の捕虜になったのでした。

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