24、不死鳥の背に乗って
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____そして。
「あああぁぁ……高いよぉぉ……怖いよぉぉ……落ちたら死ぬよぉぉ…」
私の脆い信念は、早くも上空……不死鳥の背の上で折れかけていた。
下が見える度、涙が出てきそうになるし、不死鳥が揺れたり旋回する度に、死を覚悟しなくちゃならないし。
どうしてあそこから出てきたんだよぉ、分不相応でカッコつけて私のバカバカ……と、絶賛後悔中だ。
『そんなに泣くならば、魔王城へ戻られれば良いでしょうに』
「うひぃ、後ろ向かないでぇ! 揺れるぅぅ!」
『落ちれば私が空中で拾いますから御安心を』
「ありがとう!! でも落ちる前提で話しないでね!?」
前しか向かないんだ、私は魔王なんだ……とブツブツ呟くことで自己暗示し続ける。
じゃないとこのまま高さからの恐怖と緊張で気絶しそうだ。
『そう言えば、彼も、私の背に初めて乗った時は、怯えてしがみついてきました』
「彼? もしかして始祖様?」
『ええ。ですから不遜な先代より、まだ覚悟や力も足りない貴女の方が、よっぽど魔王として好ましい。始祖の意志を継ぐならば、やはり争いはよくないものです』
「そ、そうなんだ…」
やっぱり、あの人は争い事は嫌いな人だったんだ。
……優しそうな日本人みたいな初代魔王陛下。
そう考えると、やはり魔族と人間を二分して、不仲にした理由が気になる。
いったいどうして、初代魔王陛下はそんなことを考えたのだろう。
……うーん、でもまぁ、今考えても仕方ないか。
『そして貴女はどこへ行かれるおつもりで?』
「えと、捕虜たちのいるところってどこだったっけ? 確か、“獣の王”アルフレッドさんの領地で」
『東大島のスレイブヤードですか。良いでしょう、そこまでお送りします。けれど陛下、私も魔物の身。聖力の満ちる統一王都までは行けません』
その言葉に、兵士さんの治療をした時の火花が脳裏にフラッシュバックした。
……あんなのが大規模で起こったら、いくら古代幻獣の不死鳥でもひとたまりもないだろう。
「わかってるよ。ありがとう、不死鳥。そこまでお願いできるかな」
『ええ。日暮れまでに着くように飛ばしましょうか。……少し捕まっていなさい、陛下』
え。ちょ、待って、それって……。
ギュン!!!
風を切り、不死鳥は一気に加速する。その速さはまさに疾風迅雷。
あ、……これヤバイやつだ。
……と、いうことで私はあっさりと意識を失った。
*
『_____下、陛下。着きましたよ…起きなさい』
「……ん……」
痛む頭を抱えながら首を振り、むくりと起き上がると、私を捉えたのは、神秘的な黄金の瞳。
回りには、可愛らしいレンガ造りの家々。
すぐそばには海と小さな船があり、ここが港だと認識することができる。
回りには人はほとんどいないので、不死鳥の姿を見て驚く者はいない。
私は不死鳥の背から降りると、首を1回、回した。すると案の定ゴキゴキと音が鳴る。
うわぁヤバイ音した、と思いながら制服とかつらを整え、私は不死鳥に微笑みかけた。
「ありがとう、不死鳥。ここはどこ? ここはもう“獣の王”の領土なの?」




