22、不死鳥の忠告
「彼……?」
それって、誰ですか? と不死鳥に訊く前に、ランスさんが緊張した声で答えた。
「初代魔王陛下……つまり始祖様のことでございますよ」
「え!」
「不死鳥は、始祖の時代から生きる唯一の魔物、そしてこの世に1匹しかいない幻獣です。そして、始祖様が初めて呼び出した魔物もまた……不死鳥なのです」
呆気に取られた私に、不死鳥の目が少し優しくなった気がした。
……体全体に黒い炎を纏った、圧倒的な存在感を放つ火の鳥。
それは、始祖様の1番の魔物での忠臣だったというのか。
『その通り。魔王の始祖の面影があります。歴代魔王の誰よりも、貴女は彼に似ている』
「私が……?」
『ええ……もしかしたら彼の血族なのかもしれませんね。……ですから、私は貴女に忠誠を誓いましょう』
それを聞いた城の魔族たちの間で、わぁぁっ、と歓声が沸き起こった。
え、何? 何が起こったの、と状況を把握しきれない私は、混乱するばかりで何も言えない。
……なんか、影夜国に来てから私、混乱してばっかりだな。状況を鑑みればそれも仕方のないことなのかもしれないけど。
「まさか不死鳥、あなたが新王陛下の臣下となるとは。先代の使役は拒否したというのに」
『私は、私の意に沿わぬ服従は致しません』
え!
不死鳥は、先代様に服従するのを拒否したの!?
それなのに、私は……新前魔王なのに私はOKってこと?
始祖様に……初代魔王に似てるからって、黒髪黒目だからって、正式に11代目から地位を託された先代様には従わなかったのに、私はいいなんて、なんかそれって、やばくない?
心境としては、部活の先輩が選抜メンバーに選ばれなくて、後輩の自分が選ばれてしまった感じだ。
……ま、現実ではそんなことないんだけど。美咲先輩が私より強いなんて有り得ないし。
『そして貴方は…確か、12代目の“智の王”でしたね』
「はい」
『……ふむ。まぁ良いでしょう、貴方の事情に私が口を挟む道理はないですからね。ただ、貴方が良からぬことを企むならば、阻止するまでです』
「……何がおっしゃりたい?」
心当たりがあったのか、ランスさんが眉を寄せる。
……あのことか。
記憶に残っていない、休戦協定を破る書類を書いた時のこと。
理由がわからず戸惑っていることが、恐らく不老不死の不死鳥には、不審な挙動として映ったのだろう。
……他の魔族の誰にも、動揺を気づかれることはなかったのに。
『いいえ、ただの忠告ですよ』
「……、」
『まぁ、今の影夜国の様相を思えば、少々嘆かわしくはありますが……』
今度こそ、心外というようにランスさんが顔を顰めた。しかし不死鳥はふわりと浮き上がると、泰然とした声で宣う。
『貴方がたは、いつまで争いを続けるのです』
「……何を……」
『争いも、憎悪も、何も産まない…ただ醜いだけだというのに』
不死鳥の黄金色の瞳が、ふと私を捉える。
びくっ、と体を強ばらせた私に、不死鳥は言った。
『用があれば、呼びなさい。いつ何時でも貴女の下へ行きましょう、新たな魔王よ』




