18、皆と打ち解けられた
……そして。私は呟いてから、あることに気がついた。
顔を上げて、ランスさんに尋ねてみる。
「あの…ランスさんや、メイドさんたちは……もう食べたんですか? ご飯」
「いいえ。陛下より先に食事をいただくわけには参りませんので。
ああ……それとも毒見をお望みでしょうか。心配されずとも、陛下の魔力に打ち勝てる毒を作り出せる者などおりませんよ。魔力は毒への免疫にもなるのです」
そ、そういうことじゃないんだけどな。
「あ、あの……じゃあ、みんなで食べませんか? みんなご飯まだなんですよね? ……席も空いてるし、ご飯を食べるの、1人じゃ寂しいし」
「陛下」
私の言葉に、メイドさんや執事さん達が呆気にとられた顔をしている。
何をそんなに驚いているのだろう、と思っていると、ランスさんが少し困り顔で言った。
「陛下と卓を共にすることは、不敬にあたるのですよ。貴女がそのようなことを仰れば、私達家臣は戸惑ってしまいます」
「不敬って……そんな」
じゃあ私、これからずっと、魔王城ではご飯は1人で食べなくちゃいけないの?
そんなの寂しすぎる。ご飯は皆で食べるから美味しいんじゃないか。
今となってはもう無理かもしれないけど……家族と団欒しながら食べる食事は、高級料理にも劣らないと私は思う。
それなのに。
「……そんな古い慣習、いりません」
「陛下?」
「私を魔王というのなら、一緒に夕飯を食べましょうよ。メイドさん達も、執事さん達も。
私は、皆さんと仲良くなりたいです。それでも、頑固に古い慣習を守ろうとするなら、言いたくないけど言いますよ。
……次期魔王命令です」
上手く言えないけど。
正しいのかすらわからないけど。
ここで1人でいることを受け入れてしまったら、魔王になった時、私は恐怖で人を従わせる人間になってしまいそうな気がした。
……そんなの嫌だ。絶対に。
国を治めることなんて、どういうことかわからない。
けど……独裁者にだけは、なってはいけない。
歴史でも、絶対的な権力は必ず腐敗していた。
革命や戦争を繰り返して……私は、絶対的な支配者になんてなりたくない。
「……ご命令とあれば……」
「陛下がそう仰るのであれば」
戸惑いながらも、皆が次々と席についていく。
次々と並べられる料理に、少し頬が緩んだ。
……少しずつでもいい。変えていきたい。
この国を。この世界を。
私の常識を押し付けてばかりじゃなくて、皆ことも理解しながら。
*
そして、夕飯を食べ終わる頃には、私達はだいぶ打ち解けることが出来ていた。
私は近くに座ったメイドの女の子達と仲良くなれたし、執事さん達ともそれなりに話すことができた。
ランスさんは終始呆れたような苦笑を浮かべていたけれど、結局一度も止めようとはしなかった。
聡い彼は、誰よりも私の気持ちを理解してくれているのだろう。
「まさかランスロット閣下や、新王陛下と同じ卓を囲めるとは思いませんでした!」
「新しい魔王陛下が私達と同じくらいのお年で、こんなに明るくて素敵な方だなんて! 夢のようだわ」
「もー、やめてったら、恥ずかしいよー」
メイドの子の賞賛に、照れて頭をかく私。
「ねぇ陛下、ランスロット閣下って素敵だと思わない? 凛々しいお顔がたまらない! それに、臣下の私達にも、いつでもお優しいのよ」
「確かに、ランスさんってイケメンだよね」
「いけめん? なんですの、それは?」
「かっこいい人ってこと」
「まぁ、さすが陛下! 新しい言葉なんて、進んでいらっしゃるのね!」
きゃいきゃいとはしゃぐメイドの子達に、私も笑顔になる。
……いつの時代でも、どこの世界でも、女の子はかっこいい人に弱いね。
女子高生同士でのおしゃべりを思い出して、私はちょっと安心した。




