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8、先代魔王への疑惑

「陛下。これが我が星……アシュタロスの世界地図にございます」


……どうやら、それはほんとに世界地図だったようだ。私はランスさんが広げた地図をじっと見る。

上が北、下が南、というのは地球の地図とも変わらないらしい。また、地名の表記も日本語だ。ここの世界の公用語は日本語なのかもしれない。なんて私に都合のいい世界だろう。


「この大きな大陸……“北大陸”の全てが、影夜国の領土となります」


げっ!? 魔族の国ってデカッ!

世界地図の3分の1を占めるだろう北の大陸が、全部影夜国! ひぇー!

……そしてその大陸の中央部分に、私達がいる王都があって、更にその中心に魔王城があるのだという。

私、まさかの大国の女王様……。


「そして、“中央海原”を挟んだところに位置するのが、“南西大陸”です。そしてこの大陸の全てが、人間達の国……、

聖ミスリル統一王国となります」


どわー……人間の国もデカかったよ。

大陸全部を国にするの、流行ってるのかこの世界。

しかも残る陸は、南西大陸の北東にある大きな島と、北大陸と南西大陸の間にある比較的小さい島しかない。


「ねぇランスさん。まさかアシュタロスには、魔族の国と人間の国、2つの国のしかないの?」

「はい。我ら魔族の国“影夜国”、そして人間の国“聖ミスリル統一王国”。…、かつては人間の国は一つの帝国と、そのいくつかの属国により成り立っていましたが、……人間と魔族との対立により、何代目か前の人間の王が国を統一したのです」

「対立で……人間が、まとまったんだ……」


まさにあれだね。

先生に対して反発し始めたら、あんまり仲良くなかったクラスがまとまるっていうあれ。


「そして陛下、これが先程貴女様がいた島……『名前の無い島』です。戦争が始まってから、この島を中心として、この周りの海のみならず、北大陸の南西の海岸、そして南西大陸の北西部が激戦区となっています」


言って、ランスさんは地図の真ん中に位置する島を指さす。

……なるほど、人間の国と魔族の国に挟まれた島だもんね。


「じゃあ、ここは? ここはなんていう島ですか?それともこれも大陸ですか?」


私は次に、最後の陸地となる、東の(らしきもの)を指さした。

大陸に比べて遥かに小さいが、地球の世界地図で言う日本列島に比べれば断然大きい。グリーンランドを思い浮かべてみればわかるだろうか。


「ああ……それは東大島です」

「ひがしおおしま?」

「ええ。我が国の“獣の王”が半分を治める土地ですが、人間たちも住んでいますよ。そこはアシュタロト唯一の中立区域ですから」


ここが“獣の王”領です、とランスさんが地図を指でなぞりながら説明してくれる。

中立区というのは、戦争が起こっていない地域というところか。

……一番住みやすそうな土地だな、と私は思う。


「そして領の中には、人間たちの捕虜を働かせる“スレイブヤード”もあります」

「え……捕虜?」


久しく耳にしていない怖い単語に、ドキッとする。

スレイブヤードって……直訳すると、奴隷の……庭、だよね?

そんなの……なんか、やだな……。


「人間の王子……つまり、先ほど言った勇者も、ここに入っています」

「勇者が……捕虜……」


なんて似合わない単語の組み合わせだろう。

勇者と言えば、魔王の天敵。剣を携え仲間を集め、一騎当千の絶対的強者のはずだ。

……そう、ゲームの世界では、必ず勇者が魔王に勝つ。

何度闘って負けても、回復魔法で生き返って、諦めずに挑んで勝利をもぎ取るのだ。


____だけど、ここは異世界。

死んでも生き返りはしないし、万能の教会なんてどこにもない。

あるのは、徹底的な弱肉強食の世界と、魔族が人間たちを蹂躙する世の中だけ。


「どうしたんです?陛下」

「店主さん……」

「勇者が怖いんですかい? ……大丈夫大丈夫、ランスロット閣下はお強い。そんな素晴らしい方を従える魔王陛下ならば、どんな人間達の兵器でも蹴散らせるはずです。自分に自信を持ちなせぇ」

「え……?」


人間の……兵器を、蹴散らす?

勇者が怖い?

どういうこと……?ここでは、魔族が上位の種族で、人間を蹂躙するばかりだと思ってたのに。

なんで魔族の店主さんが勇者を警戒するような素振りを見せるの?


……まさか、先代勇者に滅ぼされた十二代目魔王陛下とやらが、『人間は恐ろしい』とか、『人間は忌むべき存在だ』などと吹き込んだのだろうか。

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