表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14才の萌  作者: らう゛ぃ
30/33

6-4 光あるところにある何か

 画面の俊平がラヴィに聞いた。


『神宮寺さん。仲間の宇宙人さんで、誰か協力してくれそうな人はいないかな』

『姉さんがいるけど、それで良ければ』

『ああ、問題ないよ』


 すぐにラヴィは電話をかけた。


『もしもし』

「へい、もしもし」


 突然、運転中のローズ・・・・・・・が返事をした。


「ローズさん!」


 俊平が思い切りツッコんだ。


「なんで声入れてんですか!?」

「いや、だってこれ私だもん。ちょっとだけでも参加したいじゃない?」


 画面が進んでしまったので、ラヴィが電話の最初まで巻き戻す。


『もしもし』

「へい、もしもし」

『今、大丈夫?』

「大丈夫だぷぅ」

「ぷぅ!?」

「五月蠅い」


 すかさず首を絞めたちえりだったが、そう言う彼女も笑いを堪えている。

 画面ではラヴィが真面目な顔で喋っていた。流石は姉妹、この程度は日常茶飯事なのだろう。


『明日だけど、空いてる?』

「ムリだぷぅ」

『本当に?』

「マジだぷぅ」


 画面のラヴィは、一呼吸おいた。


『嘘でしょ?』

「バレたぷぅ」


 車内が笑い声に沸いた。


『姉さん、失敗だった』

「お疲れぷぅ」

『だけど、面白い提案をする者がいたぞ。一旦仕切り直して、明日はヒーロー活劇をする事になった。この電話は、それへのお誘いだ』

「え~、どーせ悪役でしょ~? それじゃやる気出ないぷぅ」

『んー……、じゃあ、ちょっと待っててくれ』


 その時、画面のラヴィは電話を離し、化学室の三人に言った。


『どうやら忙しいらしいな』

『そこ、サラッと嘘を吐かない』


 間髪入れずちえりが突っ込んだ。絶望的に思えた感情のしこりは、結構解消されたらしい。


『お姉さんだけど、悪役だから渋ってるのね?』

『んむ、大正解だ』

『カァーッ、全く分かってないな』


 俊平は顔に手を当てた。


『いいか? ヒーローが輝くのは、悪者がいるからこそなんだ。それにな、悪党ってのは好き放題出来るんだぞ? まったく、一度やったら病み付きになるってのに……』

「この台詞、今なら分かるなぁ」


 ローズが苦笑した。


「確かに、ある程度お話通りに進めるんだけど、細部はアドリブだらけだし。こけし落ちてたとき、どうしようって思っちゃったもん。『あれ、もしかして、これで終わり?』って」


 車内で爆笑が起きた。

 画面では、悪役の素晴らしさを淀みなく語った俊平に、萌が頷いた。


『詳しいね、俊平』

『だろぉ?』

『やっぱ悪役やれば?』

『だよなぁ……って、いやいや』


 俊平は頭を振った。


『今回は駄目なんだよ。結束を強めるって意味があるからな』


 ――たまに俊平って、こういう台詞を吐くよね。

 萌が横をそっと窺うと、ちえりはすでに俊平の首から手を離し、代わりに彼の手を握っていた。


「結局このあと、色紙で姉さんを釣り上げた」

「えっ?」


 萌は聞き咎めた。


「ま、まさか……」

「そう。元アイドル、門倉(かどくら)サキさんの色紙だ」

「僕の母さんだね、それ!?」


 唐突に出てきた身内の名に、萌は突っ込んだ。


「許可取ったの!?」

「んむ、モエモエが電話で取ってた。余談だが、モエモエママは凄く乗り気だったぞ」

「ああ……。それは、うん」


 容易に予想がついた。さぞかしノリノリだっただろう。

 ラヴィはディスクを停止した。


「さて、あとは細部を煮詰めるだけだから、明日思い出してくれ。ぐっすり眠れば気分は爽快、果報は寝て待てだ」

「あぁ、そうかい」


 座席にもたれた俊平は、車の天井を眺めた。


「予定外だったのはどの辺りだ?」

「んー、まずは爆弾騒ぎで、ちえりがいきなり手の皮を切ろうとした所だな。滅茶苦茶焦ったぞ」

「一番慌てたのは僕だよ」

「違ぇねえ」

「もちろん、モエモエを傷つけないのが大前提だったから、緊急バリアーを張ってな。モエモエの性格なら、庭に飛び出すというのは予想通りだった。そこで満を持して、空中から花嫁衣装を着た私が登場というわけだ」

「メンデルスゾーンの『結婚行進曲』付きでな」


 俊平は顎をさすっていた。


「んで、その後は?」

「名前も予想外だったな」

「僕のラヴェンダーって案が拒否されたんだよね」

「いや、あれ、実は正解なんだ」

「え?」


 萌は目を瞬いた。


「な、なんで?」

「本来、私が名乗るのはウリュー・ドガという名前だったんだ。多分、ドガは伏せて、ウリューだけ言っていただろう。日本三大鍾乳洞の一つだな」

「龍河洞……って、あのさあ」

「何かな、モエモエ。とある県の鍾乳洞だが」

「ええ、高知ね……」


 ちえりも脱力した。


「ねえ。ラヴィはなんで、それを名乗らなかったわけ?」

「モエモエが、『もし名前を当てたら、ラヴィで通してくれる?』と頼んできてな。私は無理と踏んでいたんだが……。ラヴェンダーを選んでくれたときは、嬉しさのあまり思わず正解にしてしまった。あっ、ラヴィは本名だぞ」

「なるほどね。それじゃ、マハ・ラッカの元ネタは?」

「おいおい」


 俊平が肘でつついた。


「鈍いなぁ、ちえりは。サクッと気付けよ」

「えぇっ、だって狐でしょ?」

「やれやれ。じゃあ、ちょっと考えてみろ」


 ちえりは腕組みをして、ぶつぶつ呟きだした。


「ええっと、白面金毛九尾の狐よね……。陰陽師・安部泰親(あべのやすちか)が、清涼殿(せいりょうでん)に壇をかまえて神仏に祈ったことで、狐の正体が暴かれたわけよ」

「ふんふん。それで?」

「狐は玉藻前に化けていたのを見破られたため、黒雲を呼んで、空に逃げたの」

「ほうほう、それからどした?」

「狐は那須野ヶ原(なすのがはら)で殺されたんだけど、討たれたのちも、石になって近寄る者を殺したというわけ。これが殺生石(さっしょうせき)の由来……って、百万石」

「あん?」

「近付いてる?」

「ジェットの速さで遠のいてる」

「あー、もう!」


 ちえりは癇癪を起こした。


「分かんないわよ!」

「あの、伊藤さん」


 萌は助け船を出した。


「狐の名前、逆から言ってみて」

「名前を? えぇっと、カッラ・ハマ……」


 その直後、ちえりは深い悲しみに囚われたかのように頭を抱え込んだ。


「んむんむ。高知市南部の海岸で、龍馬像が太平洋を臨むあの桂浜(かつらはま)は……関係大有りだ」

「でしょうねえ! あぁ~、なんで気付かないの、私……」


 ちえりは両手で顔を覆い、深く溜め息を吐いた。


「きっと、知識が邪魔したんだと思うよ」


 萌は優しくフォローをした。


「そもそも、俊平が分かる事なんだからさ。専門的に考えなくても良かったんだって」

「あぁ、うん……」


 ちえりは幾分立ち直ったらしい、顔から手をどけた。

「そうよね、確かに岩崎君のいう通りだわ。ひっくり返すなんて、基本中の基本よ」

「へっ、じゃあその基本に引っかかったってわけだ」


 ちえりは俊平に一瞥をくれた。


「ねえラヴィ、このネーミングは誰が考えたの?」

「ほとんど俊平だぞ」

「なら、気付いて当然じゃない!」


 ちえりは零距離パンチをねじ込んだ。俊平、2度目の死亡である。


「ラヴィ、脱線してごめん。続きお願い」

「んむ、姉さんが来た辺りだな。あの辺は本当にテンパってた。こけしやらボンバーやら、全部想定外だしな。ああ、もちろん、そのままやったら大騒ぎだから、三人にだけ通じるよう細工をしてだ」

「細工?」


 ちえりが聞いた。


「どんな風に?」

「平たく言うと、私達だけ拡張現実が分かる装置をつけたんだ。始めは萌だけ輪入道が見えるようにして、次は私達全員にだけ姉さんが見えるようにな」

「あのぉ」


 萌が恐る恐る尋ねた。


「もしかして、ハリマヤ・ボンバーとかの爆音や光も?」

「全部モエモエ達だけ。だから、こけしから聞こえたクラシックも周りには全く流れてないし、屋外で『コーチ剣!』って叫んだ萌は、こけしを持ってる変な少年」

「――嫌すぎる」


 両国には一生行かない。

 萌は固く決意した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ