02 ワサビは観察されてる?!
2話目は3話目に繋がる閑話みたいな話です。短いです、すみません。
川の流れる音も風一つ吹かぬ雨一滴降らない霧の立ちこめた場所で大声で飛んでるワサビなど狩りをする側から見つけてほしいと言っているようなモノで、格好のエモノとなる。…………ワサビだけの農作物を狩る奇特な動物や人間がいればだが。
「なにあれ?」
やけに小柄な三角帽をかぶったマントで全身を隠した女性が森の影から空を見上げ、大声で何か言ってる空飛ぶワサビを観察してる。
「喋る植物?また奇っ怪な……特異変異体?……それとも人格を取り付けられた呪いの子?どちらにしろ厄介なことねぇ。ま、この大陸に来てからは毎日のことだけど。」
マントの隙間から溜め息を吐きながらワサビの飛んでいく方向を観察する女性
「こ、こんどは空とぶ植物かよ。勘弁してくれ。」
ワサビが飛び立つ農地から徒歩30分程の距離にある6メートル位の崖、その上から灰色の小さな玉を6つつけた水晶のような円くて少し分厚い物越しに空とぶワサビを見る男。顔には包帯を巻きつけ、その爪は五指とも甲側の手の指と手の甲の境まで逆側に伸びている。いや皮膚に癒着している。だが皮膚の様に割れることなく男の曲げた指の形に曲がっている。
「副隊長と連絡員が亡くなって、隊長と俺以外の仲間が寝込んでるときに、これ以上の災厄を起こさないでくれよ………………死にたくねえ死にたくねえ……俺達は祖国に帰りたいんだ。災厄は別の場所に行っちまえ。」
男は悲鳴にも似た懇願する声で言いながら恐怖に満ちた目で空とぶワサビを監視し続けている。
そして森の奥、濃霧立ち込める森の一本の木の天辺から身長100cm位のブロッコリーが植物の茎でできたどこか歪な手足でバランスを取りながら目もないのにジッと見つめている。
霧に閉ざされた崖にお人形のような巨大な布の手でぶら下がった全長4m程のマッシュルームが体の周りにオレンジ色の胞子を身体の周りに浮かばせながら見てる。
巨木程の太さで密集し絡まる様に上下左右に伸びてる花の茎。その空間という空間を埋め尽くす巨大な茎にできてる隙間の土、そこに寝転がる粘土で造られた手足を生やしてるアボカドが花の茎に埋め尽くされ空の見えぬ場所で、空飛ぶワサビが見えるかのように少しずつ動いている。目がないのに。
渓流に近づいてくる空飛ぶワサビを見つめる渓流に生えた大量のワサビ。その中の一番端のワサビが、震えながら目と思われる2つの黒点で凝視している。
そのワサビは震えながら地中から抜け出てきた。そして口と思われるニッコリマークの口元のような形の白いペンキで塗った口マークから声を出した。
「やった…………これで託せる」
渓流のワサビは一言ポツリと、希望に満ちた静かな女性の声で喋った。
何とか勢いで書きました。面白いとか読みやすいとか悩みましたがそんなこと気にせず書いてみました勢いだけで。