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6章 墜ちしイカロス

―――史上最大の悪夢は、その日に起こった。


フィラデルフィア中心街…総合参謀本部の周辺である区域には大きな証券会社や省庁が建て並ぶ…言わば金融街であった。

車通りも比較的多く、人通りも目立つこの区域に炎を上げて墜ち行くイカロスの模写。

その姿は何処となく隕石のようにも思えたのも事実であった。

恐怖心を駆り立てるその様子に、その場にいた人々は騒めき、その正体が見えるようになった時には…既に遅かった。


中心街を襲った、悪夢の模倣。

其れは一瞬で街並みを壊し、元あった情景を粉砕した―――。

燃え行く街並み。全てはたった1機の墜落事故から始まった…。

フィラデルフィア総合参謀本部ビルから纔か3キロメートル地点…軌道変更が無ければ最悪の事態であった。

ゼラ・マグヌス空港まで行く予定であった飛行機はそのままフィラデルフィア中心街を暴走、荒れ狂う蛇と為った飛行機は中心街を通る大通りを爆走、物凄い摩擦音と共に、最終的には証券会社の高層ビルを防壁として悪夢は止まった。

…被害総額は1兆を儘ならない。と言うのも、総合参謀本部が金を掛けて作った中心街を壊されたのだから。


荒れ狂う蛇に引き摺られた無辜の民々は最早原型を留めていなかった。

飛行機内にいた乗客も襲い掛かるGには耐えられず、摩擦によって崩れていく壁の合間から勢いよく機内から飛ばされていった。

大通りを走行していた車は飛行機や乗客、燃料を含めた重さである200トンに敵うはずもなく、悉く押し潰されていくのがオチであった。

車の運転手も餅のように原型を留めておらず、一瞬で血の世界になったのだ―――。


◆◆◆


彼が目を覚ました時、口元には酸素マスクが付けられていた。

頭に巻かれている包帯が、その痛々しさを物語っている。寝かせられていた彼の前にいたのはパチュリーと慧音であった。

仲間たちが飛行機墜落事故の犠牲となった彼の元へお見舞いに来てくれたのだ。

彼が目を覚ました瞬間、2人は喜び合って彼に話しかけた。


「大丈夫!?ジェネシス…」


「わ、私は大丈夫だが…それよりも私のGT-Rが戦いでバンパーが凹んでな…」


「そんな話より自分の身を心配しなさい!」


安定の突っ込みを入れられた彼は安心そうな表情を浮かべていた。

ベッドの横に置かれている心電図の波は比較的正常に保っており、彼の安全を示していた。


「…こ、こいしは!?」


「…行方不明よ。…いなくなったわ。今はFBIが総力をあげて捜索活動をしているわ」


「…嘘、だろ…」


彼は悲嘆した。いや、言葉と言う表現方法では語れないものであったのかも知れない。

共にいたパートナーの事実を聞いて、彼は自分だけが此の場にいる事を申し訳なく思っていた。

涙が溢れる。それは彼自身の懺悔であった。悔しみでもあった。

自らの非力さを恨み、そして辛い思いを胸の中に閉じ込めた。


置かれているテレビでは、マスコミがヘリコプターに乗り込んで真上からの撮影を行っている。

リポーターはその様子をまじまじと語っており、その発言の一つ一つが彼の心に刺さっていく。

その散々たる情景はテレビカメラの中にしっかりと収められる。多くの人々が悲しみに苦しみ、証券会社にも死傷者は出ており…やはり史上最悪の墜落事故であった。

そして、テレビの場面が移り変わると同時に生存者の1人が傷だらけのままインタビューを受けている。

偶々瓦礫に張り付いて死の恐怖を乗り越えた、テレビに映る彼は顔を煤だらけにしながら、当時の状況を語っていた。


「…ハルバード王国の特攻部隊です。…私、この目で見ました。

…奴らはマシンガンを手にしていましたが、1人の男性が2人組のうち1人をやっつけ、もう1人をやっつけに行った瞬間、テロを働かされました…」


その発言を嘘と思える者はいなかった。

大怪我を追っている彼が、偽りをマスコミに向けて話すとは考えられないからだ。

常軌を逸脱したハルバード王国の自爆テロ。…これによって、フィラデルフィア国民のヘイトは確実に上昇していった。


「…何故だ…」


その瞬間―――再び悪夢は起ころうとしていた。

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