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46章 喚び出されし者:バハムート・エヴォルゼータ

ダイナマイトを取り出した彼女はついでに市販のライターも取り出しては、すぐに着火する。

そして高く投げると、そのまま逃げてしまったのだ。

ジェネシスたちもダイナマイトから逃れられるべく、急いでラディウスの場所まで戻る。

彼らが研究室を急いで離れた瞬間、後ろから閃光が溢れたと同時に遅れて轟音が響いた

音よりも光の方が早い為、そういうのは普通かも知れないが、その僅かな合間が恐怖にも感じられた。


ダイナマイトは研究室だけでなく、他の部屋も連鎖的に破壊していく。

と言うのも、あちこちに張り巡らされた水道管が破裂、其れがドミノのように爆発していっているのだ。

水道管の破裂によって同じように張り巡らされたガス管も誘爆、爆発によって蛍光灯が落下した際にガス管の漏れたガスに蛍光灯の落下によって発生した火が着火、辺りは悍ましい光景へと早変わりしたのだ。


「……何でこうなるんだよ―――!」


急いでラディウスに乗り込み、そのまま考古学研究所を後にする。

多くの考古学者の悲鳴が聞こえる。其れと同時に、もう1台の機械龍が発進され、ジェネシスたちの乗るラディウスと対峙する形で現れた。

彼らは武器を構え、機械龍に乗る人物を見据えた。

―――やっぱり、こいしであった。


「……何だって、使い捨てのモノは使い終わったら捨てるでしょう?

―――鼻をかむ際、ティッシュを使ったらゴミ箱に入れるのと同じ。原理は何も変わってない」


「お前は奴らをティッシュと同じ扱い出来る存在なのか……!?」


対極する存在に、彼は怒りに震えながらそう話しかけた。

今さっきまでいた場所では、既に炎が建物を包んでおり、消防隊や有志による消火活動が行われていた。

そんな下界の光景を見てはニタニタ笑う彼女は、まるで全てを統べた王になったかのような傲慢さを露わにしていた。


「……出来るよ。…だって、奴らが生きてたとしても、私には何の役にも立たない。

――――所詮、この世界も一部の人間が代表して行われる、腐った政治の大頭に過ぎないよ。

…だから私が変えるんだ。この世界をより良い素晴らしいモノにする。…そう、私の祖先のハルシオンのようにね!

―――行くよ!バハムート・エヴォルゼータ!私の理想を破壊する奴らを…消して!」


◆◆◆


彼女が乗った機械龍はラディウスの上の彼らを倒すべく、至近距離まで迫ってきた。

同時に彼らは武器を構え、襲い掛かってきた機械龍を睨み据えた。

彼女のふざけた理念を破壊する為にも、そして姉妹の思念の為にも―――。


「…こいしはん!もう…ワイたちはこいしはんを許せへんで!」


「…勝手にしなよ、ネコさん。私は私、ネコさんはネコさん。考え方は人それぞれだよ」


こいしは乗っていた機械龍を操り、ジェネシスたちに炎を吐かせる。

しかしジェネシスが機転を利かせてはラディウスを操縦し、何とか攻撃を躱す。

その隙を見計らって、ケット・シーがアルカナを取り出した。


「しょうがない…!…ワイらの出番や!―――行くんや、ゼルファ・ルロヴィオ!」


其の瞬間、ラディウスの上に現れたのは神剣を構えた龍であった。

古代文字ルーンが刻まれし、神聖なる大剣で全てを一閃すべく、襲い掛かってきたエヴォルゼータに放つ。

放たれた斬撃はこいしの乗るエヴォルゼータの外装を破壊し、中の緻密なパーツ部分が露呈する。

彼女は苦い顔を浮かべるが、其れでも尚戦う意向を示す。

神剣を構えた龍は靄に回帰して、いなくなったもののエヴォルゼータは顕在していた。


「……私だって、まだ死ぬ訳にはいかないんだ。…私の理想が叶えられるまではね。

―――ほら、あれでしょ?…日光見ずして結構と言うな、なんて言われるでしょ?」


「お前の理想に……日光ほどの価値は無い!」


彼はそう…静かに断言した。

日光、と言うのは日本に存在していたと言われる、東照宮や二荒山神社などで有名になっていた場所である。

しかし、時間の経過によって日光の町そのものも遺跡化し、今や新たな日光の町が観光事業で繁盛しているらしい。町を上書きするように出来上がった町は、考古学者的には興味をそそる話だ。


彼は大剣を構え、パーツがむき出しのエヴォルゼータに斬りかかる。

其れと同時にパチュリーと慧音が動き、電気ロッドと健脚の一撃が放たれようとしていた。

こいしは何とかしてエヴォルゼータを操縦し、3人の攻撃を空回りさせる。


「……こいし…貴方は…自分の理想を叶えて……一体何の目論見もくろみを立てているのよ!?」


慧音の、肺腑を衝くような必死な問い。

其れに対して彼女はニタニタ笑いながら、当たり前のように答える。

彼女に瞋恚を浮かべていた一行にとって、更にヘイトを上げるような行為であった。


「……クリスタル・スカルを世に出すんだ。

そして私は、水晶髑髏の強大な力によってこの世界を統一し、より良い世界を作ることでみんなが平和に暮らせる……。

更に、私は古代の叡智を手に入れるんだ。曾て地球の外からやって来た奴が遺した、超絶的な知識を、ね」


こいしは眼下の一行に向かって、エヴォルゼータに取り付けられたマシンガンを連射させる。

しかし、ラディウスの背中に降り行く銃弾の雨を潜り抜けては、ジェネシスの大剣の一撃がむき出しのパーツに一撃を蒙らせた。

機械龍から電気が溢れ、モーターの音が更なる轟音を立てる。


「クッ、…一筋縄にはいかなそうだね!」


彼女はマシンガンを仕舞わせると、新たにホーミングミサイルを発射した。

10本のホーミングミサイルは、空中に美しい弧を描きながら彼らへと向かっていく。

しかし、ジェネシスが前に出ては大剣を盾にして、全てを受け止める姿勢に移ったのだ。


「…今だ!アイツを……!」


「分かったわ!」


ホーミングミサイルは彼の元に着弾していく。

しかし、盾代わりにしていた刀身には何の影響も出ないが爆発の衝撃は強く、彼は歯を食いしばっていた。

その間にパチュリーと慧音は殴りかかり、ケット・シーとマター博士は拳銃でエヴォルゼータに抵抗する。

機械龍は攻撃を蒙っては煙を噴き出し、飛べる状態を維持は出来ていたものの、攻撃機能が全てシャットダウンされてしまっていた。


ホーミングミサイルの攻撃を防ぎきり、狼狽えを見せる彼女に対し剣先を向けたジェネシス。

此処で彼女と機械龍を纏めてやっつけるべく、バルトアンデルス戦で手に入れたアルカナを天に掲げては、声高らかに大空に向かって宣言した。


「来い!―――エデン!」


その瞬間、大空が神々しくも、黄金の色に染まり、ジェネシスの後ろに現れたのは大きな『楽園の園』であった。天使の翼が生えた浮遊大地である楽園の園はエヴォルゼータとこいしに向かっては魔法陣を描き、神聖で神秘的な巨大光線を放った。

全てを飲みこむかのような大蛇は、呆気なく機械龍とこいしを飲みこんだ。


その瞬間、空中で大爆発が発生、こいしはその身を投げ出されてしまう。

しかし、彼らは既にハルバードを離れ、熱帯雨林地帯まで飛んで来ていたのだ。

そして下に見える遺跡…其れは旅に出る前、書類で確認した遺跡―――チャカ・リプカないしデ・イラグレムであったのだ。


―――クリスタル・スカルは、其処にある。


こいしはその身を投げ出されながらも、何とか熱帯雨林の木々をクッションに助かっていた。

それよりも、このままでは彼女に水晶髑髏を良からぬことに使われるのは明白だ。

其れを止めるべく、彼らは動いた。


「…ラディウス!この遺跡に着地しろ!」

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