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45章 裏切りの裏切り

機械龍に乗った一行は、眼下の白い建物を目指していた。

ジェネシスの命令を受けたラディウスは斜め垂直に身体を傾けては下降を始める。

目標地点はハルバード考古学研究所。其処へとダイブする勢いで、機械龍はスピードを上げた。

上に乗っていた全員は機械龍の背中の凸部分に掴まり、何とかして暴風をやり過ごしていた。


―――ジェネシスは、目を瞑った。

その瞬間、鼓膜を破るような巨大な音が響き渡ったと同時に機械龍は研究所の中へと突入した。

ガラスが大量に割れる音が響き渡る。同時に、中にいた考古学者たちが悲鳴を上げては混乱する。

そのままラディウスから降り立ち、以前訪れた際にマター博士やさとりと遭遇した、大きな本棚が沢山並べられていた研究室へ赴いた―――。


途中ではばったのは、勇ましい考古学者たち。

武器を片手に、潜入者を排除すべく立ち塞がるが、ジェネシスの大剣の一撃に敵うはずもなかった。

そのまま当該研究室へ訪れると、其処には彼らの到着を待っていたかのように椅子に座っては本を読み漁っていた彼女が存在していた。


さとりは部屋にいなかったが、曾ての仲間であった彼女は不敵な笑みを浮かべながら立ち上がった。

読んでいた資料を片手に、やって来た一行を嘲笑っていたのだ。

腹立たしかった。彼は決して大剣を背中の鞘に納刀すること無く、彼女に問い質した。


「……お久しぶりだね、ジェネシスさん。さっきは随分派手な戦いをしていたそうで」


「何笑ってるんだ。…敵国に裏切ったお前を赦す訳にはいかない」


「敵国に裏切った?…そう、私は裏切ったんだね」


すると彼女の後ろに姿を現したのは、さとりとハルバード特殊部隊であった。

敵の大集合に戸惑いを覚えながらも、彼らは武器を仕舞う事は決してなかった。

さとりはそんな彼らを見下し、そして鼻で馬鹿にした。


「……で、こいしの仲間は貴方たちでは無く、本当は私たちなの。……分かるかしら?」


彼女は拳銃を取り出しては、銃口を彼らの方へ向けた。

彼らへ「死」の贈り物をすべく、不敵な笑みを浮かべては其の引き金を引こうとする。

後ろの特殊部隊たちも、銃口の先の彼らを睨んでいた。

するとこいしはさとりを制するように右手を差し伸べると、さとりは不思議そうな顔をしてから拳銃を降ろした。


「……どうするのよ、こいし」


「……此処は私に任せて。…あ、そういやエヴォルゼータの鍵は?

―――ちょっとこの後、行きたい場所があるんだ。…………"お姉ちゃん"」


その発言がされた時、彼らは青天の霹靂に穿たれたような、驚愕した感情に至った。

こいしの真実を知った時、彼らは目を丸にしては驚いていた。

唖然としていた。彼は全く訳が分からず、飲みこめないままであった。

彼女はこいしに鍵を渡すと、小さい声で姉にお礼を言っていた。


「…お前、さとりを"お姉ちゃん"呼ばわり、って…………」


「そう言う事。…でも、ジェネシスさんには何も干渉する権利は無いでしょ?

―――騙された方が悪いんだもんね。フィラデルフィア考古学研究所の持つ秘密、全てバラしちゃった」


「貴方たちのお陰で、私たちは有益な情報を得られたわ。…感謝に値するわね。

―――クリスタル・スカルがチャカ・リプカにあるそうね。その力を使えば、超常的な力でこの国も強大な存在へと変貌を成し遂げるのよ。

今戦っているフィラデルフィアなんか、犬にダダ下がりね………!」


彼は両手に握りこぶしを作った。

他の仲間たちも、裏切りを図ったこいしを筆頭にさとりたちを睨んでいる。

瞋恚をその眼で露わにさせ、目の前に存在している憎き存在を、彼はその大剣の刀身に映し出した。

しかし、彼は我慢できなくなった。

咄嗟に彼女たちに駆け寄っては、姉妹に向かって一発殴りかかろうとしたのだ。


此処で後ろの特殊部隊が姉妹を守るように立ち塞がり、彼を取り押さえる。

大人数に束縛され、彼は完全に動けなくなってしまった。

必死に足搔く。どうしようもない怒りが心を完全に立ち込め、ただ叫びたくなったのだ。


「……さとり様にこいし様、今のうちに避難を!」


そう言ったのは、彼を取り押さえていたレティであった。

さとりは彼女の言うとおりに背中を向けて消えようとするが、こいしは違った。

不敵な笑みを、ずっと口元に浮かべていた。其れは、対象を「彼ら」だけに収めていなかったかのように。


「……こいし、避難するわよ!」


「――――――避難するのは、お姉ちゃんだけじゃない?」


その瞬間、銃口が火を噴いた。

そして、銃弾の先にあったのは……姉の心臓。僅か一瞬の出来事であった。

彼女はそのまま倒れた。唐突に起きた現象に、彼はスローモーションのように時間経過が遅くなった気がした。

目を疑った。裏切ったはずの彼女が、敵を殺害したなんて。


「……其れに。丁寧にも私を逃そうとしてくれたけど、余計なお世話だよ。避難するのは……貴方たちでもあったのかもね」


こいしは彼を取り巻く特殊部隊を一瞬で銃弾の餌食にした。

研究室に飛散する血飛沫。彼も銃弾を蒙りそうになるが、取り巻いていた特殊部隊を盾に何とかやり過ごした。

こいしの拳銃の銃弾がなくなったのか、拳銃を投げ捨てると自らが殺した者達の死体を眺めていた。

まるで宝飾を眺める、羨望を抱いた少女のような姿であったのだ―――。


「……哀れなる残骸、かな?ちょっとカッコつけて言ってみたけど、私は過去を甦らせるの。

……まあ、アンドラメシス細胞なんて発動は気まぐれだし。

………クリスタル・スカルの超常的な力を国の再建とか、訳分からない思想に使われたくないの、分かるかな?

―――――ふふ、だからお姉さまも、特殊部隊もみんな、…殺しちゃった~。

―――仕方ないかな?……だって、私は………ジェネシス、貴方の敵。生まれもって尚、私たちは敵関係だったんだから」


彼女はそう、彼に語り掛けた。

生まれもって敵関係だった、と述べる彼女に彼は理解出来ないでいた。

血の池を踏む。彼は大剣を構えながら、ゆっくりと彼女の元に近づいては静かに問いかけた。


「……どういうことだ」


「私は……シュトラ文明を築いた創始者、ハルシオンの末裔。

―――貴方たち、エストネア3世の末裔を代々、捜し続けたけど見つかったの。

お姉ちゃんを後ろ盾に、貴方と接近しては色々な情報を得た。…そして、時は満ちたんだ。

―――ほら、こう兎死して走狗そうくらる、って言うでしょ?」


「なっ…!?……私が…エストネア3世の……!?」


彼女は姉から受け持った鍵を片手に、そのまま去ろうとする。

追いかけようとする彼らに対し、笑みを浮かべると片手に紅いモノを浮かべた。―――ダイナマイトであった。


「…そ、其れは………!?」


「……全員、死んじゃえ!」

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