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24章 大統領との会談

バハムート・ラディウスはそのままフィラデルフィアの街並みを背景に飛翔する。

やがて見えた総合参謀本部ビルと言う巨大な建物の最上階に設置されたヘリポートにそのまま降り立った。

再び粉塵を巻き起こしたと同時に、ヘリポートの英略表記である「H」とオレンジ色で大きく描かれた上に彼らは降りた。


久々の故郷の空気に、やはり安心感を覚えた。

小町は手際よく、ラディウスを充電する為に設置されたコードを機械龍とを繋げる。

そして、小町を中心としたジェネシスたちは風が吹く、寒い屋外を後にしてそのまま中へ入った。

巨大高層ビルである、フィラデルフィア総合参謀本部ビル。

小町を先導に、彼女は一行を"連れてゆくべき場所"へ案内を行う。


「…今から、皆さんとお話したいって人物がいるので、ご紹介しますね」


「…一体誰なのかのぅ」


マター博士は疑問符を浮かべて、前にいる小町に問うた。

白髪を無機質な空間の中で流して、自分たちが連れていかれる場所を案じていた。

一行はそのまま敷かれたカーペットの上を行く。そして奥に見えた、淋しく存在していた部屋―――。


―――大統領室。


その文字が見えた時、一行は流石に緊張せざるを得なかった。

フィラデルフィアの全てを統治する人物―――永琳大統領との面会は予期もせぬ出来事であったからだ。

小町は木目が味わいを引き立てる木の扉をノックすると、中から返事が聞こえた。


その声はやはり彼らを更に束縛させるものであった。

しかし、赤い髪を靡かせている彼女は緊張もへったくれも無く、柔和させて入る。


「あっ、永琳様!今帰りました~」


「…これはまた、お世話になっております」


回転椅子に座っていた永琳はジェネシスの元まで赴き、深々と頭を下げた。

大統領に頭を下げられる気分は極めて居心地が悪い気がした。すぐに彼は止めるよう促す。

ガラス越しに見える、フィラデルフィアの幻想的な街並み。太陽は美しくも輝いている。


「…いや、やめて下さいよ大統領」


「…まあ、貴方たちには色々と危険な目に遭わせてますから、それへの謝罪も含めて、です。

―――あ、マター博士…ご無事に何よりです」


「お久しぶりじゃのう、永琳よ。…お主も今や大統領の身か」


慣れ親しそうに話すマター博士に、ジェネシスは何処か違和感を覚えた。

彼の中では、永琳は凄く誇張されたような大きな存在に対し、マター博士は身近に感じた存在であった。

その両極が普通に会話していることに、何処か変な疎外感を覚えていたのだ。


「…もしかして、マター博士と大統領、って…」


「そうじゃよ、パチュリー。…曾て話した仲じゃからな。…今はこんな感じだが」


パチュリーの質問に即して、彼は普通に答えた。

ジェネシスのように大統領を誇張した畏怖を抱いている訳でもない。すんなりとした心は彼女と容易に会話を交わせるようにしていたのである。


「…ま、まあ先ずは皆さん、座りましょうよ」


◆◆◆


小町の1言で、一先ずは椅子に座って、机を挟んだ形で会談を始めた。

今回、永琳大統領が態々ジェネシスたちを呼び出したのには、しっかりとした訳が存在していた。

ケット・シーは1つの椅子を使えば机の陰に隠れてしまうため、こいしの上に座っている。

その居心地よさそうな表情を浮かべる猫に、彼も少なからず思いを馳せていたが…。


「…で、小町のミッションを達成したことを先ずは称賛します。

…マター博士は我が国の国宝レベルのお方です。…奴らに奪われては大変ですから」


「称賛、って言われてもなぁ…釣られたようなものだし」


彼は頭を掻き毟りながら、そう答えた。

確かに彼は珍品好きだ。…ケット・シーと言う猫型ロボットを餌として、彼と言う魚が釣れた。

だが、彼自身はあのような激しい冒険も嫌いと言う訳では無かった。


「…YouTubeで観ましたよ。…バハムート・ゼロミッション戦の雄姿を」


「は、はぁ…って誰が撮ったんだ!?」


彼は素っ頓狂な声を上げたと同時に部屋内を見渡した。

誰もが唖然としている。…誰も撮った覚えなど無いのだ。…実際、仲間は戦いに専念してくれていた。


「…ま、まあ其れは置いといてください。…ジェネシスさん、凄い戦いっぷりでしたね」


「は、はい…それはご丁寧にも、どうも...」


自分の戦いが何もかもネットに上げられているとなると、やはり嫌な気持ちであった。

全てが監視されているようで…そう考えると、動画サイトの存在は大きいものと言えた。


「…で、話を本題に。

…今回の功績を受けて、ジェネシスさんを…『フィラデルフィア総合参謀本部特殊部』に任命します」


「…ファッ!?」


◆◆◆


会談を終え、部屋を後にした一行。彼は自らが任命された職を受け、驚きに浸っていた。

冷たい空気が肌に触れる。其れと矛盾するかのように窓から差し入る、暖かな陽の光。


「…まあ、そう言う事ですよ。…ジェネシスさん、此れからは頑張ってください」


「…大変そうだな」


他人事のようにも思えていた彼は何処か溜息をつくと、独りでに歩き出した。

何処へ向かうのか、全く見当が付かなかったこいしは彼に問いかけた。


「ど、何処行くの?」


「…曾てお前と一緒に立ち寄った、空港のコーヒーショップだ。

…どうせなら、誰かついてくるか?」


そう聞くと、こいしとパチュリーが彼の元に寄る。

こいしは予測していたが、パチュリーは全くと言っていいほど予想していない相手でもあった。

頬を赤らめさせて、彼に賛同を示す。


「…私も行くわ。…貴方と話したいこともあるし、ね」


◆◆◆


彼のGT-Rは総合参謀本部ビルの地下立体駐車場にしっかりと納車されていた。

ケット・シーたちはFBIの車でそのまま考古学研究所へ戻ってしまった。

ジェネシスも立ち寄ったら、その後はしっかりと考古学研究所へ戻るつもりでいた。


傷一つないボディ。…凹んでいた過去は何時の話か。

そのまま3人は乗り込み、彼を運転手として走りだす車。

助手席に座るパチュリー、後ろに座るこいしをフロントミラーで一瞬だけ垣間見ると、彼は何処か安堵を覚えた。

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