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22章 喚び出されし者:バハムート・ゼロミッション

燃え行く世界の中、ゼロミッションの死角から現れた一行。

マター博士も、何処かで拾ったのかバズーカを肩に担いでは、その勇ましき姿を見せつける。

見廻り兵が生き残りであるジェネシスたちを見つけるや、威勢よくマシンガンを連射した。

しかし老齢である彼のバズーカの一撃は兵士たちをいざ知らず。そのまま爆発を起こし、悲鳴を上げた。


哀れなる断末魔。

邪魔を処理したマター博士は奥にたたずむ兵器を睨む。其れは他の仲間もそうであった。

機械龍の背中には、炎を背景として1人の枢機卿が立っている。

片手には二枚刃の日本刀を構え、眼下に顕在したジェネシスたちを見下すかのように―――。


「…哀れね。…確かに私たちの兵器であるギャラクシュアスを倒したのは称賛に値するわ。

―――だけど、ゼロミッションは格が違うわ。…とくとその眼に焼き付けなさい!」


「あんたの言う事、ワイは理解出来へんで。

…"格"が違うなら、何故最初からゼロミッションを用いらなかったんや?」


レミリアの発言に齟齬を感じ、指摘するケット・シー。

当の彼女は表情を少し強張らせたと同時に苛立ちを見せ、舌打ちをする。


「…余計な真似が出来るネコさんなのね。フン、つくづくフィラデルフィアの技術には感銘を受けるわ。

…その要らない機能、貴方の仲間たちの心臓と共に刈り取ってあげるわ!…感謝しなさい!」


◆◆◆


ゼロミッションはレミリアを乗せたまま、目の前に存在する一行に向かって灼熱を吐く。

灼熱…機械龍の体内で生成された、鉄が溶けない位の温度である1,200°を保ったマグマそのもの。

それを一気に口から放つや、ジェネシスたちは其れを見切った。


「パチュリーとケット・シーはゼロミッションの背後に行け!

私とこいし、マター博士は前方に配置!挟み撃ちにして気を惹かせ合うんだ!」


「「「「了解!」」」」


ジェネシスの通りに配置につくと同時に灼熱をそれぞれ躱す。

燃え行く大地に置かれた瓦礫を容易く吹き飛ばす姿は、やはりゼロミッションと言う兵器の凄まじさを物語っていた。


「勝手に図に乗らないで欲しいわ…!…ゼロミッション!先にジェネシスをやっつけなさい!」


レミリアの命令を受け、ゼロミッションは対象である3人を検知センサーのターゲットに設定した。

視界の中で蠢く3人に向け、自身に搭載された最新の兵器技術を用いる。

表皮に設置されているロケットランチャーを一斉に放射し、3人を追跡させる。


パチュリーとケット・シーは裏から回って不意を突くも、レミリアが其処に存在していた。

ゼロミッションの背を守るように立ち塞がった彼女は、パチュリーの電気ロッドを容易く受け止めた。

ケット・シーは拳銃で彼女を穿とうと試みるも、二枚刃は呆気なく銃弾を斬り裂いてしまう。


「なっ!?アイツ、銃弾斬り裂いたで!?」


「拳銃が全てと思いこまないことね、ネコさん」


レミリアはパチュリーから離れ、遠くで銃口を手向ける猫に向かって走る。

気づいたケット・シーは慌てて背を向け、1人で逃走を図る。しかし身体の大きさは一目瞭然であった。

圧倒的な速さで迫りくる彼女に…猫は絶望した。


「はわわわわ…」


「勝手な真似はさせんぞ!」


狙いを定めてバズーカを撃ち放ったのはマター博士。

追い詰められていたケット・シーを助ける為、レミリアに向かって躊躇なく発射した。

火の粉を撒き散らしては、バズーカはレミリアに着弾しないものの、爆発と同時に黒煙を起こす。

視界が濁り、見えなくなった彼女の隙を窺ってケット・シーは逃走を図り、態勢を立て直す。


しかし、ジェネシスやゼロミッションたちを取り巻く黒煙は司会を遮った。

だが、ゼロミッションには暗視センサーが搭載している。…対象が見えるのだ。

ロケットランチャーの雨を辛うじて躱した3人のうち、彼は大剣を構えて斬りかかった。

だが黒煙が視界を遮り、攻撃は空周りしてしまう。


「なっ…!?」


彼は見えなくなった視界に狼狽せざるを得なかった。

大剣を下に、ゼロミッションの気配をただただ捜して―――。


その時、であったのかもしれない。

視界に迫り行く、巨大な"紅"。それは黒煙を溶かし、全てを包み込むかのように―――。


「あ、危ない!」


すぐさま彼を押し倒した、1人の少女。

彼自身、迫りくる灼熱に怯えを見せ、何処か動けなかったのだ。

足が震えた。腰が抜けた。頭が絶望で埋め尽くされた。…しかし、彼女は違った。


「…こ、こいし…」


「いいから早く立ってよ!…やっつけよう!アイツを!」


黒煙は晴れ、5人はいつの間にか集まっていた。

ゼロミッションはそんな眼下の5人に紅き眼を向けている。その上に立つのは…レミリア。

スーツ服から目立つ、蝙蝠のような翼を過敏に動かして、その状況を見守っていた。

…抗いの色を示す彼らに対し、擠陥せいかんするように―――。


「…そうだな、こいしの言う通りだ…。…下手な作戦なんて混乱するだけだな。

―――此処からは一斉に攻撃を仕掛けるぞ!」


「「「「了解!」」」」


全員は了承し、それぞれが武器を構えた。

レミリアは未だに抗う5人の儚さを謳い、馬鹿にしているような表情をしていた。

右手に持つ二枚刃の日本刀。刀身の白銀に燃え行く灼熱を投影させて…。

歪なる炎。朧げに映る景色は何処ぞの幻影か―――。


「…馬鹿らしいわね。…まだ戦うなんて。

…私も枢機卿として事務処理やシステム調整とか仕事はあるのよ。その合間を縫ってまで此処に態々来てあげてるんだから…」


「なら帰って仕事してろよ」


ジェネシスの言葉に鮮烈な痛みを覚えた彼女。

左手に握りこぶしを作って、自らの憤怒を露わにさせる。


「…黙ってなさい」


彼女はゼロミッションに命令すると、機械龍は5人に向かって勢いよく灼熱を放とうとする。

しかし、その瞬間―――彼の眼は光った。

大剣を携え、灼熱を口にまで持ってきていたゼロミッションの腹部に剣先を当てて。

勢いをつけていた事も功を奏して、大剣はそのまま体内の灼熱生成機を…粉々に砕いて。


電流が解き放たれた。それと同時に大爆発が発生、至近距離にいたジェネシスは大剣を盾にして防ぐ。

他の4人も気づき、急いで離れてがレミリアは遅れ、爆発の餌食となってしまう。


「な…な…」


怯える彼女の姿は黒煙に飲みこまれ、同時に赤色が黒の上から油絵のように重ねて塗られる。

悍ましい光景に何処か恐怖を抱きつつも、初めて"勝利した"と言う感覚を手に入れた。

ジェネシスは爆風を大剣で防ぎきり、何とか4人の元に姿を見せた。


◆◆◆


黒煙が晴れた元の場所には勿論、ゼロミッションはいなかった。レミリアもいなかった。

刑務所は戦いの惨禍に飲みこまれ、炎に包まれて悲惨な状況と化していた。

天井が崩壊し、青々とした空が見える。其処に映った、巨大な龍の影と共に響いた声―――。


「皆さん!また会えましたね!」

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