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17章 脱出せよ!

さとりは抗いを見せるジェネシスたちに向けて拳銃を構えた。

漆黒の拳銃は空しさが空回りして漂う寂寥を貫き、一つの閃光にように存在していた。

向けられた銃口にジェネシスは笑みを浮かべていた。


「…だったらお前を倒し、此処の資料を奪ってやるまでだ!

…私たちの街を散々破壊した挙句、マター博士を拉致する奴らに払う情けなんて…無い!」


ブレイズバリスタを構えて斬りかかる彼に対し、さとりは近くに設置された甲冑の盾を借りる。

金属音が響き渡り、彼女は彼の威勢に押されていた。

しかし、盾を構える反対の手で拳銃を彼の頭に向け、その引き金を引いた。

―――殺害する意思が其処に見られたのだ。


「あ、危ないジェネシスはん!」


ケット・シーは彼の頭に乗っかり、銃弾を回避させる。

間一髪で躱したものの、ブレイズバリスタの攻撃は盾を外れて地面に空回りする。

その隙を窺って彼女は彼の背中に拳銃の銃口を向けた。


「…貴方に自由の権利は無いのよ」


「そうはさせないわ!」


持っていた電気ロッドに電流を纏わせ、殴りかかったパチュリー。

その一撃はさとりを感電させたと同時に衝撃を与え、拳銃を地面に落とさせる。

すぐさま拳銃を奪った猫は小さい身ながらも、真上の彼女の顔面に向けていた。


「…いいわ!…機械軍兵、全員攻撃開始!」


彼女は右手を挙げると、機械軍兵たちが突入を開始した。

武装した軍団はジェネシスを中心としてマシンガンを連射し、殺害を試みていた。

老齢のマター博士は棚の陰に隠れ、その一事をやり過ごすとする。ジェネシスは大剣を携え、機械軍兵の突破を試みた。


「ワイ特製の手榴弾、行きまっせ~!」


ケット・シーが投げた手榴弾は考古学研究所内で爆発、機械軍兵たちは吹き飛ばされてしまう。

後方の兵士たちはパチュリーがいつの間にかケット・シーから受け取っていた手榴弾を投下する。


「とっとと死ぬのよ!」


爆発に巻き込まれた機械軍兵たちはその叫びを上げることもないまま、マシンガンを投げ出す。

3丁のマシンガンを拾い、何時でも取り出せるよう装備した彼女は今まで乗っていたバイクに乗る。

彼女は彼に合図を送ると、ジェネシスもケット・シーも気づいたようであった。

ジェネシスは棚に隠れるマター博士の手を引っ張り、バイクに乗るよう勧めた。


「早く逃げましょう!今、フィラデルフィアとハルバードは戦時中なんです!」


「な、なんじゃと…!?」


マター博士は拉致され、情報がシャットダウンされた中に身を置かれていたため初耳であったのだ。

ジェネシスの告げた真実に驚愕を示しながらも、彼の言う事に逆らう要素は何処にも存在しなかった。

彼のバイクの後ろに乗った博士は心配そうでありながら、全てを案じていた。

ケット・シーはパチュリーの右肩に掴まり、全員の乗車を確信すると2人はアクセルを踏み切った。


「…方角は北西や!北西方向に巨大な窓が存在するんやで!其処を突き破って脱出や!

途中、機械軍兵たちがいるけど何とか撃退するんや!」


ケット・シーの声が場違いなバイクのエンジン音と共に館内に響く。

白衣を纏った考古学者たちは背を見せて逃げ、代わりに兵士たちが壁を築いて立ちはだかる。

しかし兵士たちが放つ銃弾に怯えの色も見せない彼らはアクセルを全開、一気に突っ込む。


轢かれ、突き飛ばされる兵士たちを尻目に走行す2台のバイク。

そのままスピードを出し、猫の言う北西の方角にバイクを進め、其処にあった巨大な窓―――。


「頭を下げてて下さいね!マター博士!」


ジェネシスはそう忠告すると、彼は出来る限り頭を下げた。

そのままバイクは硝子に突っ込み、太陽の輝きを反射した硝子片と共に飛び出した―――。

其れは真夏の波飛沫の示唆か。輝く海と共に投げ出された2台のバイクはそのまま大通りに出る。


しかし、さとりの合図で機械軍兵がバイクに乗って追尾を開始した。

其れにいち早く気づいたのは、双眼鏡で周りを見渡していたケット・シーだ。


「き、来たで!しかも先頭にいるのは…機械軍弐號式枢機卿…"フランドール・スカーレット"やで!

…アイツに呼ばれて駆けつけたんか…厄介な奴が来てしもうた」


機械軍兵たちのバイクの海の中の最前線に存在する、スーツ服を纏った女性。

背中には宝飾が吊り下げられた翼を付け、拡声器を片手に投降をジェネシスたちに呼びかける。

市街地に響く、柔らかな声。


「今すぐ投降して!さもなければ実力行使に移るよ!」


「にゃーん!お断りやで~!」


ケット・シーの身体に標準装着された拡声器を使い、猫も嘲笑の反論を示した。

顔を真っ赤に染め、怒りを表情に露呈させたフランはアクセルを踏み切り、2台のバイクの後ろにつく。

至近距離まで近づいた3台目のバイクに気づいたジェネシスはバックミラーを通じて笑みを浮かべていた。


「…とっとと蹴りを付ける!」


◆◆◆


相変わらず大通りは渋滞であった。

車の横の纔かな隙間を通行路として、そのエンジン音を唸らせていた。

レミリアは二本刃の日本刀であったに対し、彼女はバズーカを構えていた。


バズーカを発射し、2台のバイクを穿とうとするフラン。

しかし走行中に狙いを定めるのは至難の業であり、外れたものは渋滞に巻き込まれた車を爆発させる。

完全に巻き添えを喰らう車にも意を示さず、只管に獲物を追っていた。


「…的外し過ぎィ!」


「ジェネシス、其れを言うな…」


マター博士に諭され、運転に気を取り直す彼。

十字路に差し掛かり、信号機は赤を示していたが追手がいる以上、無視せざるを得なかったのだ。

横切る大きな車、小さな車。その中を搔い潜って突き進む、2台の漆黒のバイク。


「邪魔だ!」


ブレイズバリスタを構え、縦横無尽に走る中―――車を断ち切って進む彼。

斬られた車はそのまま運転感覚を失い、そのまま衝突、続いて玉付き事故が発生した。

フランも車の並を超えようとするが、ジェネシスが引き起こした事故で進めなくなってしまった。


「どうしてこうなるの!?」


彼女に続いて多くの機械軍兵も追いかけるが、事故の余波を避けれる術は存在しなかった。

車から降り、互いに喧嘩をし合う運転者たち。それを尻目に走行する2台のバイク。


「意外と簡単なものね」


「それはどうかな?」


渋滞は消え、大きな車道を広々と使えるかに思えたが―――。

…2台のバイクの行く先にあったのは、5台のバイク。それは壁を織り成し、行く手を塞いでいた。

中にはジェネシスが見覚えのあるミスティアやレティや空、そしてヤマメが存在していた。

中には見覚えのない、猫耳をした少女が存在している。胸には金色の勲章を携えて―――。


「さとり様の命令だ。ここを通す訳にはいかない」


流石のジェネシスたちも其れには抗える方法は存在しなかった。

やがて後方には事故の波を潜り抜け、やって来た大勢の機械軍兵たち―――。

道の前も後ろも囲まれ、袋の鼠状態に陥ったのだ。


「…これで終わりよ?」

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