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13章 喚び出されし者:バハムート・プログラリウム

列車の上はやはり強風に煽られる。

ジェネシスは大剣を構え、目の前にいたミスティア目がけて一気に斬りかかる。

しかし風の強さで態勢を崩してしまい、列車の屋根に右手の掌を付けて耐え忍ぶ。


「…何だこの荒風!?」


「だったら先に終わらせよう…この私が!」


拳銃を構え、一気に連射するミスティア。

相手が単数で、暴風吹き荒れる屋根上で戦うのは不利と考えたジェネシスは急いで梯子の元まで行く。

彼の様子を見計らったパチュリーも反応し、すぐさま車内に避難する。

ケット・シーも彼女の右肩に乗って移動し、ミスティアは戸惑ってしまう。


「何で逃げるんだよ~!」


すぐに車内に降り立つや、ミスティアと対峙する2人と一匹。

彼女は拳銃で再び連射するも、彼がブレイズバリスタの大きな刀身を盾として銃弾を防ぐ。

弾かれる音が響き渡り、彼女の攻撃は空回りしてしまう。

その間に裏を回り、自らに元々装着されたマシンガンを露わにしたのはケット・シー。

ミスティアに向かってマシンガンの銃弾の雨を浴びせるや、それらは彼女の腹部を穿つ。


「グフッ!?…グホッ!…」


慈悲は無い。ケット・シーは銃弾で踊る彼女に容赦しなかった。

銃弾が切れるまで彼女に銃弾を穿ち続け、辺り一面は紅く染まってしまう。

血塗れた池に彼女は最終的に墜ちて、大剣を鞘に仕舞うジェネシス。

猫はマシンガンを体内に仕舞うや、派手にやってしまった事を後悔する。


「…ワイ、結構派手にやってもろた?」


「やり過ぎ、ね。…まあ、どうせ生きて復讐しに来るんでしょうけど」


パチュリーはぶっきらぼうに答えるや、猫は頭を掻いた。

すると銃弾を直面して受けたにも関わらず、ゆっくりと立ち上がって嘲笑を浮かべる姿が其処にあったのだ。

何処からの余裕なのだろうか?彼女は両手を大きく広げ、口から溢れる吐血を抑えながらも、笑みを浮かべて―――。


「…ふはは、流石はフィラデルフィア、なかなかやるね。…でも私はこれで撤退させて貰うよ。

次に会う時はどんな時かな?…フフフ、じゃあね~!」


そのまま列車の扉を開放すると、其処に垂れさがったロープに掴まって上に避難してしまう。

見上げてみると、其処には旅客列車と並走して飛ぶヘリコプターが存在していた。

プロペラの回転する音がそのまま消えてなくなると、辺りには列車の走る音だけが聞こえるようになる。


「…弱かったな」


「後は此処の運転席をハイジャックするだけね」


パチュリーはそう言うと、今までは武装兵が占領していた車内を見渡す。

…今や誰もいない。妨害が何もない為、すぐに運転席へ赴けるはずだ。


「…急ごう。時間が無い」


◆◆◆


運転席。そこは鍵で施錠された扉が隔てた空間であった。

中からは多少の話声が聞こえる。彼らは扉の前で武器を構えていた。

FBIの使命だ、果たさなくてはならない。その一心で―――。


「ほんなら、行きまっせ~」


「気安く言うな…」


ケット・シーに諭されて大剣を構え、そして一撃を扉に放つジェネシス。

その重たい一撃は扉を吹き飛ばし、運転席を開放させる。中にいた運転手たちはジェネシスの荒行に動揺を隠せないでいた。

すぐに副運転士が護衛用の拳銃を構え、怯えながら彼らに向ける。


「な、何者だ!?」


「ほんな、悪いけど…平和の為なんや、許してくれへんか」


ケット・シーは持っていた催涙スプレーを副運転士の顔に浴びせる。

涙が止まらなくなり、そのまま膝から崩れ落ちるのをパチュリーが捕らえ、客室へ投げ飛ばす。

続いて運転手にも催涙スプレーを浴びせようとするが、事態は急変した。

運転手は紅いボタンを押すや、急に電流が走ったと同時に現れた、実体のない巨竜。

プログラム化された巨竜は運転手を守るかのように立ち塞がると、巨大な咆哮を上げた。


「う、五月蠅いわね…!」


「あれは…やはりいたんか。…噂では聞いてはんけど…。

―――バハムート・プログラリウム…プログラム化されたバハムートや!」


パチュリーは耳を両手で塞ぎ、轟音を防ぐ。

そのけたたましい咆哮は辺りを貫き、ジェネシスも怪訝な表情をする。

電流を常に靡かせ、実体のない翼を広げて…。


「行こう、此れもフィラデルフィアの為だ!…パチュリー、ケット・シー!」


◆◆◆


ジェネシスは大剣を構え、実体のないバハムートを前に斬りかかった。

しかし相手はプログラム、攻撃は空振りしてそのまま列車のフロントガラスを突き抜ける。

吹き飛ばされそうになるジェネシスに対しケット・シーが反応、小さな身体にでも関わらず手を差し伸べた。

間一髪、彼はケット・シーの救済によって助け出された。


「あ、ありがとな…」


「ほんま危ないところやったやんか!無茶はあかんで!」


そんな彼らに向かってプログラリウムは電流を溜め、巨大な電磁砲を放つ。

其れに反応したパチュリーは電気ロッドを構え、彼らの前に立つや、その電磁砲を電気ロッドで吸い取ってしまう。

何事も無かったかのような雰囲気に、彼は驚いた。


「な、何をしたんだパチュリー!?」


「奴は主に電流を司っているわ。…電気ならこのロッドで吸い取れるのよ」


「はえ~そんな画期的な使い方…ほんま凄いへんな…」


しかしプログラリウムは黙ってはいなかった。

再び電磁砲を穿つも、パチュリーは綿あめを作るように絡めとってしまう。

その繰り返し…工場での淡々とした作業のような感覚でやり取りは行われていた。


「…でもアイツは実体がない…どうやったら倒せるんだ?」


「…プログラリウムのデータを保管してる機械を破壊すればええで。

…おっ、これか?ワイはコレと見たで」


ケット・シーは跳ねながら指で機械を示す。

周りと比べて分厚いその機械と見たジェネシスは大剣で一刀両断するや、プログラリウムの身体は一瞬にして消えたのであった。電流が残照として残る。

壊された機械は爆発し、彼は大剣で防いだものの運転手はそのまま吹き飛ばされてしまう。

辺りは寂寥に回歸し、沈黙が漂う。


「…運転手には申し訳ないが、仕方ないんだ…」


彼は運転席に座り、ブレーキを完全に解除、スピードを尋常じゃない勢いで上げていく。

時速60…80…100…。…列車はいつの間にか特急のような速さにまで達しており、車内からは不安の声が上がる。遠くの水平線に映るのはビル街…そう、ハルバード王国の中心街だ。

今までの報いを晴らす為…全てはミッションの為に。


「…スピード全開!時速130突破!」


「よし!後は避難やで!ワイらは列車の上で待機、ぶつかった瞬間に駅構内に飛び降りて混乱の中で移動やで!…移動手段はバイク、機械軍のバイク駐車場から借りていくんや!

機械軍のバイクに鍵は要らないから誰でも乗れるんや!勿論、其処にいる見張りは倒さなはんアカンけどな!」


もう一度梯子に登り、高速で疾走する列車の上で待機するジェネシスたち。

やがて見えたターミナル駅…ハルバード。其処に向かってブレーキの音沙汰も無い列車は走っていく。

目を尖らせて、その瞬間を窺って―――。

…そして列車の先頭車両がホームに入線した瞬間。


「今だ!」


飛び降りたと同時に列車は櫛形ホームであるハルバード駅構内へそのまま…突撃した。

車止めを破壊し、壁を突き破ってホームを疾走する旅客列車。客は驚き、そして轢かれたり撥ねられたりする人々…。


「…行くで!バイクまでの道のりはワイが案内したるわ!」


「そうはさせないわよ!貴方たち…FBIの遣いね!私たち機械軍が許す訳にはいかないわ!」


多くの武装兵たちと共に彼らを囲んだ、蝙蝠の羽を生やしたスーツ服の女性。

身長は低くても、依然として大きな態度を見せつけている。二枚刃が取り付けられた日本刀を片手に…。


「…機械軍弐號式枢機卿…"レミリア・スカーレット"やな!

妹であるフランドール・スカーレットと共に機械軍で活躍してる存在やで!」


「敵なのね…なら戦うまでよ!」


彼女はレミリアに対して何処か関係がありそうだと考えながらも武器を構えた。

其れは前世の記憶か、レミリアに対して何か親近感が沸いたような…。

しかし所詮は機械軍、行く手を阻む敵であることに変わりは無いのだ。


「…哀れね!此処で朽ち果てなさい!フィラデルフィアの遣いよ!」

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