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狂い始める恋心
「……なんでエリカは、あいつのことが好きなんだ……」
これは秋終の夜
ある部屋から紡がれる
歪んでしまった
青年の恋心
カーメルは呪詛を吐くように呟く
己の想い人
エリカの心を奪った旅人
レスターへの怨怒を込めながら
「ボクはエリカのことが、ずっと前から好きだったのに……奴が……奴が……」
恋することに
後先など関係ないのだが
彼の心はそれを
受け入れない
受け入れられない
だからこそ
嫉妬という名の怒りを
心の奥底に抱く
器から溢れ続けても
構わないという風に
御し切れない嫉妬は
憎悪へ変わり
本来の清浄な恋心を
ドス黒い液体に
奥底から侵食されるかのように
心を歪ませる
それは愚かなこと
しかし彼は気づかない
自己正義という
甘美な愚酒に心底から
蝕まれてしまっているから
「……エリカにはボクこそがふさわしいんだ……ボクこそがエリカを幸せにできるんだ……ボクの愛はエリカに受け入れられるんだ……レスターなんかエリカにはふさわしくは無い……無いんだ」
彼は呪詛を吐き続けてる
狂った彼を受け入れる者は
果たしているのだろうか――