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二人の決意 村長の問いかけ

三週間も遅れて、すいませんでした……

聖人祭の雪降る夜

カーメルの凶行

伝わり合った胸中の想い


レスターは妄想に捕らわれたカーメルを

己が背中に背負い

エリカと共に

決意を瞳に宿して

ルドニの村へ降りた


伝統という名の鎖から

エリカを解放するために――


ルドニの村は

今も浮かれ騒ぎをしていた

誰かが丘の入り口から

エリカとカーメルを背負ったレスターを見て


「おーい、エリカじゃないか。酒でもって……どうして旅人さんがカーメルを背負っているんだ?」


「ちょうど良かったわ。カーメルのことについて、村長さんと話しがあるから、村長さんがいる場所を教えてくれません?」


「ああ、村長なら、そこの家にいるはずだが、カーメルの野郎がなにかやらかしたんか?」


「ええ、やらかして、レスターさんに返り討ちにあったんです」


「そうかそうか! そりゃあ、面白くやられたんだろうな!」


村人は赤い顔で笑いながら

コップに酒を注ぎ

周囲と同様に

浮かれ騒ぎに興じている


それは祭りの間

ずっと続いているのだろう


エリカとレスターは

礼を言うと

村長のいる家へと向かった



ルドニの村の長は

ルドニの村開拓時代から

生きている長老だ


彼は祭りの時であっても

村と住民のことを

常に思っていた


最も、昨今の悩みは

十六になっても

嫁ぐためにカーメルと付き合おうとはしない

エリカのことなのだが

その悩みも

彼の願い通りには

叶わない形で

終わりを告げるのだ


コンコンと

木製の玄関扉を叩く音が

村長の耳に入った


「こんな時間に誰かようかね? おや、エリカとレスター殿ではないか。その背にはカーメルもおる。いったいどうしたんじゃ? ともかく、ここは寒いから、家に入りなさい」


「村長さん、ありがとうございます」

「僕のほうもありがとうございます」


村長の家に入った

エリカとレスターは

家主である村長へ

礼の言葉を伝える


「いやいや、気になさらず。にしても、今日はワシに何かようかね? ああ、そこのソファーに腰掛けても構わんよ。まぁワシも君たちに訊きたいこともあるしの」


「ええ、実は今夜あたしが丘にいたら、カーメルがあたしを襲おうとしたんです」

「彼女が襲われそうになっているところを、僕が助けましたので、彼女は何もされてません」


エリカとレスターの口から伝わる

カーメルの凶行


「なんと、カーメルがエリカを襲いかけたじゃと!?」

先ほど起きた事柄に

村長は叫び声をあげる


しかし、二人のカーメルに対する報告は

尚も続く


「さらにカーメルは、レスターさんにナイフを向けて、レスターさんを殺そうとしました。それは、あたしが近くにいて、見ていたので証人となれます」


「結果的には、僕が彼の攻撃をかわして、彼の足の臑に蹴りを二発ほど入れただけなので、身体に支障は無いはずです」


「そうじゃったのか。カーメルには、情状酌量の余地はないようじゃな。エリカよ、お主はカーメルをどうしたいんじゃ?」


「それは村長さんが決めてください。ただあたしは、レスターさんの元にいたいだけですから」


「彼のことでなく、僕たちのことも伝えに来たんです」


カーメルの凶行について語った二人は

本題を村長に伝える


「あたしの想い人はレスターさん以外にいません。カーメルと一緒にいたくはありません」


「ごらんの通り、僕は旅人ですが、同じく彼女を想っていますので、僕たちが付き合うことを許していただきますか」


エリカの口から発せられた想い

それはルドニの村の始まりから伝わる掟に

反した言葉


そして、村の住民であるエリカを

生命の危機から脱しさせた

村の恩人でもある

レスターの頼み


村長にとっては

掟の裏切りと

恩人の頼みという


二つの板に挟まれた状態に

まとめ役である村長は苦悩する



「……二人とも、ワシが阻んでも、裂けれぬほど愛し合っておるのじゃな? とくにレスター殿。あなたは旅をする身。旅の危険からエリカの身を守れるのかの?」


村長の問い

それはエリカの身を案じてのもの


村とその周りで

生まれ育ったエリカには

外の世界というのは

良い刺激になるのだろう


しかし外の世界には

悪しきことも存在する


ゆえに村長は

エリカの伴侶となるレスターに

愛する者を危険から守れるかどうか問うたのだ


レスターの答えは

すでに揺らぐことなく

だいぶ前から決まっていた


「ええ、どんな危険が彼女に迫っても、生命の限り彼女を守り抜きます」


レスターは決意を

堅く秘めた瞳で

村長の問いに答えた――

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