再会の前哨
「……はっはっはっはっはっは……」
レスターは走っていた
想い人であるエリカがいる
ルドニの丘の
頂きを目指して
レスターがルドニの村に着いたのが
今から数分前のこと
年に一度のイヴェール祭で
祝いの酒を呑み
祝いの食物を食べ
浮かれ騒ぎをしている
村人たちの中から
エリカの両親である
薬草医を見つけ
エリカがいる場所を
レスターは訊いたのだ
「エリカかい? なら、丘のほうにいると思うよ。ほら、あそこの方」
「あの子は賑やかなところが苦手だからねぇ。丘なら静かだから、そこにいると思うよ」
「そうですか、ありがとうございます」
レスターはエリカの両親に礼を言うと
エリカの父親が指差した
丘のほうへと
向かい始めたのだが
途中で酔っ払った
二人組の男性の話し合いが
耳に入った
「そういや、カーメルの奴が見ないな」
「あいつ、エリカにぞっこんだが、日に日に様子がおかしくなってないか?」
「そうだなぁ、あんな様子で告白されたんじゃ、断られるに決まってるわな」
「違いない違いない。俺が女でも、あの不気味な感じのカーメルなんかに告白されたかないな」
「そりゃそうだ」
「「がぁーはっはっはっはっは」」
二人組の男性が
同時に笑いあう
他者にとってはたわいのない話でも
レスターにとっては一大事
「(こうしてはいられない!早く彼女のところへ向かわなければ!)」
レスターは急ぐように
丘の頂きへと
馬か豹のように
勢いをつけて駆けていった
再び訪れた
エリカの危機を
救うために――




