(駿介サイド)
駿介の過ごし方。の巻
俺の誕生日はクリスマスだ。小さい頃は兄や弟は誕生日ケーキとクリスマスケーキを食べ、プレゼントも2個ずつもらえるというのに自分はケーキは一つだし、プレゼントもちょっと豪華とはいえ、一つ。この不公平感がどうしても納得できなくて俺はクリスマスがあんまり好きじゃない。
12月25日は「メリークリスマス」と「しゅんすけくん たんじょうびおめでとう」のチョコプレートがついたケーキを母が購入するため、ますます自分の誕生日だけが扱いが雑な感じがして余計にクリスマスが好きじゃなくなった。
俺の誕生日がクリスマスだと聡太先輩に教えてもらった武内さんから、ケーキを焼いて持って行きたいと言われたとき、俺は驚いた。
思い立ったら即行動の聡太先輩とは違って、おっとりしてるんだなあ、と思っていたけど、やっぱり聡太先輩の妹だ。先輩ほど策士で強引じゃないけど意志の強さは似ている。
以前に食べたケーキも美味しかったし、間違いなく焼いてくれるケーキも美味しいに違いない。
それに、あの小動物みたいな武内さんをむげに断るなんて、俺には出来ない。武内さんを見てると、弟・裕介が以前に飼っていたハムスター“ハムすけ”を思い出す。ちなみに名づけセンスのなさは兄弟共通だ。
武内さんは聡太先輩や伊織さんが男の基準と刷り込まれているようで、俺のことはそんなに苦手ではないみたいだけど、家に来て孝介兄さんや裕介に会ったら驚かれそうなので、外で待ち合わせをすることにした。
話の流れでメルアドも交換することになり、俺はとっくに消した高1の頃少しだけ付き合った女子いらい久しぶりに自分の携帯に女の子のアドレスを登録したのだった。
その夜、さっそく武内さんからメールが届いた。
「こんばんは。さっそくメールをしてみました。ケーキについて好みをお伺いしてもいいでしょうか」
ケーキの好み・・・・・・。前にもらったキャロットケーキは美味しかったな。が、ケーキの種類言はよくわからない。ただ、生クリームとか、甘すぎるのは苦手なんだよなあ。ケーキを食べるのに向き不向きがあるなら、俺って絶対向いてないと思う。
とりあえず、「こんばんは。内藤です。甘すぎるお菓子は苦手です」と送信した。我ながら、愛想のない文章だよなあ・・・。
携帯を見ながら、考え込んでいる俺は相当に変だったらしく、兄・孝介が「駿介。携帯見ながら何考え込んでんだ」と不審げに俺を見ていた。
「別に・・・・」これ以上ここにいると、そのうち携帯をのぞきこまれそうなので俺は自分の部屋に引き上げた。
部屋で受験勉強をしながら、ふと考えたのは武内さんのこと。
どんなケーキ焼いてくれるのかなあ・・・俺の返信内容を見て、甘すぎないケーキについて考えているであろう武内さんがなんとなく想像できて、今年はクリスマスが楽しみになってきた。
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駿介は3兄弟の真ん中です。