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苑子の奮起。の巻ーその2
今朝、日直なので内藤さんと会う1本前の電車に乗った。日直だからしょうがないけど、内藤さんと話をしない日は、なんか寂しい。
この日は、聡太お兄ちゃんに頼まれて私は駅前の大きな本屋に立ち寄っていた。取り寄せた本が入ったと連絡をもらったものの、兄はバイトで行けないらしく、私が頼まれた。
この本屋の参考書売り場で、内藤さんにバッタリ会ったんだよなあ。あの時はまさに「盆と正月がいっぺんにきた」だった・・・。
聡太お兄ちゃんに頼まれた本を受け取り、私は時間もあるので本屋の中を見て回ることにした。
本屋の中もクリスマスにちなんだコーナーが出来上がってて、絵本やお菓子の本、編み物の本なども置いてある。そこで、私は目についたお菓子の本を手に取った。
ブッシュ・ド・ノエル、チョコレートケーキ、イチゴのケーキ・・・うう、どれも美味しそう。いろんなカップケーキを作るのも楽しそう・・・・本に熱中していると、隣から「武内さん?」と声をかけられた。
声のした方向に顔を向けると、そこには内藤さんが立っていた。
「な、内藤さん。偶然ですねっ」
「ちょっと、本を見に来たんだ。武内さんは?」
「私は、聡太兄さんが取り寄せた本を受け取りに。クリスマスコーナーがあったので、ちょっと立ち寄ってました」
「そのお菓子の本にすごく熱中してたね」と内藤さんが笑う。・・・そんなに熱心に見てたか、私。恥ずかしい。
「その本、買うの?」
「え、えーと。きょ、今日は見にきただけですっ。」
「・・・・じゃあ、一緒に帰らない?なんか前もこういうことあったよね。」
このまま一緒に帰ってもいいけど・・・・もう少しだけ。
「あ、あのっ。時間があったら暖かいものでも飲みませんか?」私は、断られるのを覚悟して、誘ってみた。
内藤さんは、ちょっとびっくりしたみたいだけど「それもいいね」と賛成してくれた。
ショッピングモール内にあるカフェで、私はロイヤルミルクティー、内藤さんはコーヒーを飲む。
「あの」
「ん?」
「兄から、内藤さんの誕生日を聞きました。12月25日、クリスマス生まれなんですね」
「うん、そうなんだ。・・・ケーキが一緒で、プレゼントもちょっと豪華だけど一緒。小さい頃はイヤだったなあ」と内藤さんは苦笑い。
「それで・・・その・・・・」
「うん、どうしたの?」
「あの・・・ケーキを焼いてもいいですか?」
「え?」
「あの・・・日ごろ、兄がお世話になってるし。専心祭では案内してもらったし・・・・お、お礼として」
「お礼なんて、別にいいのに」
「い、いいえっ。そういうわけには・・・・迷惑なら言ってください。」
「・・・迷惑じゃないけど、大変じゃない?」
「いいえっ。大変じゃないです!」思わず私はムキになってしまった。
お店の人がこちらを見る・・・・なんか、今日は恥ずかしいところばかり、内藤さんに見られてる。
「そ、それで。できれば、そのう、当日にお渡ししたいんですけど・・・あの、都合はいかがですか」
「俺は、家にいるから大丈夫だけど・・・クリスマスは武内さんに予定はないの?」
「夜に伊織兄さんが帰ってくるくらいで・・・特にないです。じゃ、じゃあ・・・あのっ。25日に渡しに行ってもいいですか?」
「え。家に?・・・・・うーん・・・・家、その日俺のほかに兄貴と弟が家にいるから、武内さんびっくりしちゃうと思うよ。だから、外で待ち合わせでもいいかな」
「は、はい。あの、それじゃあ、メルアドを教えてもらってもいいでしょうか」
「え?」
「あ、あの。待ち合わせ場所とか決めるとかに、必要だと、思って・・・」
「あ、そ、そうだね。」私たちは、お互いにあたふたしながら、メルアドを交換した。
私は初めて父親と兄たち以外の男の人のアドレスを登録したのだった。
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この回は待ってるばかりじゃダメだと苑子が動きました。