第3章:自分でがんばる-1
苑子の奮起。の巻ーその1
季節は冬休みがあと1ヶ月というときに、私は内藤さんの誕生日を知った。
知ったきっかけは、いつもの朝の電車でのこと。
私は毎年、兄たちの誕生日にケーキを焼く。私がケーキを焼くようになってから毎年恒例になっていて、5月は伊織お兄ちゃん11月は聡太お兄ちゃん。そして1月の私の誕生日には兄二人がプレゼントをくれる。ちなみに、昨年もらったのはムーミンキャラクターのマグカップとプレートだ。北欧特集のテレビを見ていて、「あのマグカップ、かわいい」って言っていたのを聡太お兄ちゃんが聞いていたらしく、私に内緒で用意してくれていた。
こんな話をしていたら、内藤さんが「俺は来月誕生日なんだけど、今年は勉強だなあ」と言った。
「あ、あの。」
「どうしたの?」
「えっと・・・」誕生日教えてください・・・・と言いかけたところで、私の降りる駅に到着してしまい、私は内心がっくりしながら、内藤さんに挨拶して電車を降りたのだった。
誕生日・・・聞けなかった・・・・聡太お兄ちゃんなら知っているかな。帰ったら聞いてみよう。
家に帰って、夕飯後に私は柿とバナナをいれたカップケーキを焼き始めた。お菓子も料理も作ってると気分が楽しくなってくるから不思議。
オーブンに入れて、ケーキが膨らんでくるのをみるのは至福のときだ。
「学校で、樹理ちゃんと食べよう♪」私は焼きあがりに満足した。
「お。なんかいい匂いがする」と聡太お兄ちゃんがキッチンに顔を出した。
「そうくんの誕生日に焼くケーキの試作をしてみたの。」
「お。そっかー、柿とバナナ?へー、面白いものを入れるんだな。」
「そうくんは、昨年の誕生日当日は彼女さんと出かけてたよね。今年もそう?」
「今年は、当日でいいよ。」聡太お兄ちゃんがサラリと言った。
「ふうん。わかったよ」・・・ほろ苦いチョコレートケーキでも焼いてあげようかな。
なんてしんみりしたけど・・・・当の聡太お兄ちゃんは、焼いたカップケーキに手を出して「苑子~。これ美味いな!俺、ケーキ、これがいい!」と嬉しそうだ。
・・・なんか、気を使わなくていいらしい。
それに、今なら内藤さんの誕生日が聞ける。
「ねえ、そうくん。・・・・内藤さんって誕生日いつ?」
「は?内藤の誕生日?」ケーキを食べ終えた聡太お兄ちゃんは一時不思議そうな顔をしたものの、次になぜか、ニヤニヤしはじめた。
「そうくん、笑顔が気持ち悪いよ」
「失礼な・・・・ふうん、内藤ね・・・・いいんじゃないの?」
「知らないならいいよ」
「クリスマスだよ」
「へ?」
「だから、内藤の誕生日はクリスマス。毎年ケーキがクリスマスケーキと一緒らしいぞ・・・あげたら喜ぶだろうねえ~・・・なんなら、かわいい妹のために内藤を家に呼んでやろうか?」
「だ、だめっ。クリスマスなんだから、内藤さんも用事あるだろうし・・・勉強の邪魔しちゃ悪いし・・・」
「・・・・一日くらいの息抜きで、ダメになるくらいの勉強なんか、あいつはしてないと思うけど?」
お兄ちゃんに頼むと、用事がない限り内藤さんは家に来てくれるけど・・・でも、やっぱり自分で決めたことだから、自分で頑張る。
「ううん・・・、私、自分で頑張る」
「お。・・・そうか。」
ちょっと、聡太お兄ちゃんが寂しそうに見えたのは、気のせいかな。
読了ありがとうございました。
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苑子が一人でがんばると決意して、聡太はちょっと寂しいらしい。
ところで、柿(完熟したもの)とバナナをつぶしてホットケーキミックスに混ぜると、甘めのパンになります。
○ックパッドで見つけたレシピにバナナを加えてみたのですが、簡単にできて美味しかったです。