第7章:1.伊織と駿介
約束のご対面。の巻
3月。俺はネットで本命の結果発表を確認し、無事に合格が決定した。
大学からも書類が来て、直接持ち込みでもいいらしいので俺は大学に持ち込むことにした。
ここで、なぜか兄・孝介が「駿介、俺も行くよ」と言い出した。
「一人で行くよ。」俺はもちろん断る。
ところが、孝介兄さんは「俺も駿介の入学する大学見たいしさ」と言って譲らない。
なんで、書類を提出するだけなのに兄と二人でいかなきゃいけないんだろう・・・。
大学に書類を提出し、兄と二人でぶらぶら大学内を歩く。
「お前、ここに通うんじゃ家を出るのか?」
「家から通うよ。通える距離だし」
「ふーん、そっか。さて、そろそろ来る時間だな」
「は?」
「お前、クリスマスのときの話、覚えてるか?」
クリスマス・・・・武内さんにケーキをもらって・・・・あ。
「孝介兄さん・・・・まさか」
「お前、ここ伊織が通ってる大学だって知らなかったのか?」
「・・・・嘘だろ」伊織さんの話はときどき聡太先輩から聞いてても、通ってる大学まで知るわけがない。
「俺が、こんなことで嘘なんかつくかい。・・・・お、来た来た。伊織―、こっち」と兄が手を挙げた。
「孝介、ひさしぶりだな・・・・そちらが弟の駿介君だね。初めまして。武内伊織です。弟と妹がお世話になってます」
目の前に、伊織さんがにこやかに立っている。でも、目が・・・確実に俺を値踏みしている。
「君が一目でわかるように、孝介に一緒に来るように頼んだんだ。悪いな、孝介」
「クリスマスに伊織から念押しされちゃったからな。お前に逆らうと後が怖い。」と孝介兄さんが笑う。
伊織さんはちょっと笑って、次に俺のほうをみた。
「入学手続きは終わった?」
「はい。あとは親が学費を振り込んでくれますから」
「それはよかった。合格おめでとう」
「ありがとうございます」
「・・・・悪い、孝介。ちょっと駿介君と二人で話したいんだけど、いいかな」
「別にいいけどさ。伊織、うちの弟をあまりいじめないでくれよな。俺、そこの建物の中にいるから終わったら電話くれよな」と孝介兄さんは俺と伊織さんから離れた。
「苑子には合格したことを教えた?」
「いえ・・・まだです。でも、合格したら教えてほしいと言われたので、教える予定です」
「そうか・・・・確か、昨年の夏に君と俺、会ったことあるよね」
「はい。妹さんと一緒でしたよね」
「記憶力はいいらしいな。でも、まさか君と苑子のことを話す日がくるとはね」
「は?」
「単刀直入に聞くけど、苑子のこと、どう思ってる?」
この質問は、前に聡太先輩にも聞かれた。そのときは小動物みたいで面白いと答えたけど、今は・・・・。
「俺と妹さんが付き合うことになったら、伊織先輩はどう思いますか」俺は伊織さんの目をまっすぐ見た。
「俺は、君が苑子を傷つけたり、裏切ったりした場合は容赦なく潰してやろうと思ってる。でも今のところは聡太の後輩でそんなに悪いヤツでもなさそうだし・・・何より、君にちょっかいを出したと苑子にばれると怒られるからね。苑子は普段温厚なだけに、怒ると怖いぞ?覚悟するんだな」
伊織さんはにこやかに笑って、俺の肩をたたいた。
俺は「そうですか」としか言えなかった。とりあえず、敵に回さなくてよかった気がする・・・。
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駿介は、とりあえず伊織に合格点をもらえたようです。
それとも苑子に怒られたくないだけか?