2.内藤裕介の観察
内藤家兄弟、語る。の巻
※駿介の弟・裕介視点です。
駿介兄ちゃんにケーキをくれた女の子は、俺と同じ高校で同じ学年。
兄ちゃんが非常にお世話になった先輩の妹だそうで、いつも無愛想な兄ちゃんが妹さんの話しをしているときは和らいだ顔をしているので、俺は俄然興味を持った。
同じバスケ部の高野がアタックしては玉砕している武内さんと妹さんが同一人物だと知ったときはちょっと驚いた。高野も悪いやつじゃないんだけど、兄ちゃんたちが言う武内さんのお兄さんたちの話を聞いてると、・・・高野の場合は武内さんのお兄さんたちに間違いなく排除されそうな気がする。
武内さんの顔はなんとなく分かるけど、クラスに直接行くのもなんだか誤解を招きそうだし、やっぱ図書室で偶然を装って接近するのがよさそう。そこで、俺は放課後に図書室に通ってみることにした。
通ってみて3日目。どうやら武内さんの当番の日に当たったらしい。武内さんが、カウンターを立ったのを見て、俺はさりげなく本を見て回ることにした。
本を棚に戻している彼女に声をかけた。最初、若干ビビリながらこちらを見たもののどうやら俺が駿兄ちゃんと似ている部分に気がついたみたいで、いくらか態度が軟化した。名前を名乗ると完全に安心したようだった。
俺は、彼女と話していて駿兄ちゃんがどうして和やかな表情をするのかが分かった気がした。武内さんは外見もふんわりしてるけど、性格も何だかほのぼのとしている。側で話してるとまるで公園で日向ぼっこしているような感じになってくるのだ。
部活に行かなくちゃならなくなって、焦った俺は思わず武内さんに「兄ちゃんを見捨てないでね」って言い逃げしちゃったけど、きっと本人はなんのことか分かってないと思う。
家に帰ると、駿兄ちゃんはまだ予備校から帰ってきておらず、なぜか孝兄ちゃんが家にいる。
「孝兄ちゃんがいるなんて、珍しい。コンパはどうしたんだよ」
「・・・・おまえね。俺だって早く帰ることくらいあるんだよ。メシ作ってあるから、食えよ」
「ありがと・・・そういえば、孝兄ちゃんは伊織さんの妹に会ったことある?」
俺が夕飯を食べるのに席に着くと、孝兄ちゃんがテーブルの向かい側に座って茶を入れてくれた。
「ない。伊織は俺らがあいつの家に行くときは、妹に出てこないように言ってたみたいだし。」
伊織さんって、徹底してるなあ・・・
「俺。今日、妹さん・・・武内さんと話をしたよ」
「へー、どんな子?伊織似?」
「伊織さん見たことないから分からないけど、外見がふんわりしてて性格がほのぼのしてる感じの子だよ」
「まじで?伊織と全然似てねえ・・・・」
「伊織さんって、どんな人?」
「文武両道。腹黒。俺様。身内には優しいが、やられたことには3倍返し。・・・簡単に言うなら、敵にはしたくないタイプだな~。」
内藤家の曲者大王・孝介兄ちゃんにそこまで言わせる伊織さん・・・俺も敵に回したくないな。
「孝兄ちゃん、俺、思わず武内さんに“駿兄ちゃんを見捨てないでね”って言っちゃったよ。」
「はあ?お前ね・・・まだ付き合ってもないのに、ワケわかんねぇこと言ってんじゃないよ」
孝兄ちゃんは、すっかり呆れた様子で俺を見る。
「うん・・・武内さんもワケわからんって顔してた」
俺は、孝兄ちゃんに呆れられて自分の発言を改めて反省した。武内さん、忘れてくれてるといいんだけどなあ・・・。
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図書室で出会った後の話です。