第6章:1.図書室で遭遇
図書室で出会ったのは・・・の巻。
3学期が始まって、内藤さんと同じ電車に乗ることはなくなった。あと1週間くらいで試験が始まる。体調万全で頑張ってほしいなあ・・・・。
今日は図書室当番で、私と一緒に当番をしているのは涼乃先輩だ。図書委員も泰斗祭が終わって、3年生が引退。委員長も、瑞穂先輩から恵先輩に交代した。
少しずつ季節は進んでいるんだなあ・・・なんて私はぼんやり考えていた。
「そのぽん、ボンヤリしちゃってどうしたの?」涼乃先輩の声で我に返った。
「あ・・・すみません。何でもないです。ただ、3年生の方はこれから試験が本番だなあ、と思って」
「そうだね~。3年生の先輩たちには頑張ってほしいよね。」
「はい」
「なんかさー、4月には3年生だって実感がイマイチわかないんだよねえ」
「わかりますー、私も2年生になるって実感あんまりないです」
「後輩は何人入ってくるかなあ~、4月には“そのぽん先輩”だね。そのぽん」
先輩って呼ばれてる自分の姿が想像できない・・・・。
しばらくすると、返却本がたまってきていたので私は涼乃先輩にカウンターを任せて返却ワゴンに本を載せて、返却作業をすることにした。
私が本を棚に戻していると「武内さん、だよね?」と知らない男の子から声をかけられた。
「はい?」私は作業の手を止めて、男の子のほうをみた。どことなく内藤さんに似てるけど・・・・誰だろう。
「ごめん、いきなり声かけて。俺、3組の内藤裕介。兄の駿介がお世話になってます」
「え・・・いいえ、こちらこそ、内藤さんには兄が面倒かけたりしてて・・・」
図書室でお辞儀しあってる私たちってなんか変、なのかなあ・・・・なんか周りが見てる。
「・・・同じ学年なのに、敬語も変だね。タメ口でいい?」
「は・・・う、うんっ。いいよ」
「駿介兄さんにあげたチョコケーキなんだけど、ごめん。俺と一番上の兄・孝介も食べちゃったんだ。」
「内藤さんに聞いた。もらった人の権限で2個キープしたってメールもらったよ」
「そうそう。うちは男ばっかり3兄弟で、食べ物の争いは過酷なんだよ」
「へえ、そうなんだ。うちは兄2人と私だからかな。そういう争いってないよ」
内藤くんのおどけた調子の言い方に思わず噴出してしまう。内藤さんの弟だからかな。なんだか話しやすいや。
「あのさ、武内さん。俺が言うのもなんだけど・・・・駿介兄さんって、無口で無愛想でとっつきにくいところがあるんだけど、よくみると表情がある人なんだ。見捨てないでね」
「は?」見捨てるってなに。
内藤くんは「ごめんな~、いきなり訳わからないこと言って。でもさ、どーしても言っておきたくて。じゃ、おれ部活あるから」と本棚から立ち去っていった。
「いったい、なんなの・・・・」私は、ぼんやりと内藤くんが出て行った方向を見ていた。
でも、なんとなく分かるのは、きっと内藤くんはお兄さんに自分の発言を知られたくないのかなあってこと。
もうすぐ試験の内藤さんにメールで「弟さんに会いました」なんてメールするのも悪いし。
「うん。忘れよう。とりあえず、仕事しよ」私は、その後ひたすら本を戻すことに集中した。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
「図書委員会」の涼乃を登場させてみました。