-4.その頃の武内兄弟。
伊織は何でも知っている。の巻
聡太視点です。
苑子が自分の部屋に引き上げたあと、居間は俺と伊織兄さんの二人になった。
俺と伊織兄さんは仲が悪いわけではないけど、性格が違うせいかあまりシンクロするところがない。付き合ってる友人のタイプも違うし、付き合う彼女のタイプも違う。
「伊織兄さん、夏休みいらいだね。」
「そうだな。苑子の勉強見てやってるんだな」
「あ~・・・ちょっと苑子に借りがあって」
「へえ・・・・それは、内藤駿介に関することか?聡太」
俺は飲んでる水を噴出しそうになった。なんで知ってるんだ?伊織兄さん!
「なんで知ってるかって?お前、専心祭に苑子と行って内藤に案内してもらっただろう。それを俺の知り合いが見かけて教えてくれたの」
「卒業して3年もたってるのに、なんで兄さんの知り合いがいるんだよ」
「お前ね、俺をなめてもらっちゃ困る。3年間生徒会にいたんだからね。専心祭には生徒会のOBだって来てるだろうが。」
そうだった。兄さんは、1年から生徒会にいて3年には会長だった。おまけに総代で。
入学した当時、「武内伊織の弟」ということで、変な注目を浴びたんだった・・・・。
「内藤はいいやつだよ。苑子は見る目があると思うけど」
「まあ、そうだろうね。苑子が見る目がないわけがない。俺たちを見てるんだからな。ついでに内藤駿介君の兄、孝介は俺の友人だし。孝介はいいやつだから弟も悪いヤツじゃないだろう」
「だったら、余計な口出しはしないほうが」
「口出しはしない。でも、観察はしたいもんだな」
伊織兄さん・・・・兄さんの『観察』って『口出し』と同じように聞こえるのは俺だけか?
兄さんは、そういうと何処かに電話をするために携帯電話を取った。
「もしもし・・・俺だ。久しぶりだな、孝介。伊織だよ、元気か?今、時間は大丈夫か?ところで、内藤駿介君って孝介の弟だよな。実はな、受験勉強の最中は迷惑になってしまうから、合格発表が終わった後に弟さんに一度会いたいんだけど、かまわないだろうか?・・・そうか。ありがとう。ところで、俺、正月明けまでこっちにいるから、一度飲まないか?明日の都合はどうかな。そうか。じゃあ、明日」
「兄さん。苑子と内藤はまだ付き合ってもないのに」
「友人の弟で、お前の後輩を一度見てみたいだけだし・・・じゃあな、俺もう寝るわ」
居間に一人残された俺は、思わず頭を抱えてしまった・・・・
すまん・・・内藤。俺がお節介を焼いたばっかりに、合格発表のあとに厄介なヤツの相手をさせることになってしまったよ・・・・。無事、合格してくれよなあ。
あとで、内藤に会ったときに謝ったほうがいいか・・・それより伊織兄さんの攻略法(あるのか疑問だが。ちなみに兄さんの一番の弱点は苑子だ)を一緒に考えたほうが実用的だろうか・・・。
次の日、朝から伊織兄さんは付きっ切りで苑子の部屋で家庭教師だ。
どうやら、自分がいる間に冬休みの課題を終わらせる算段のようで、時折聞こえてくる教え方に容赦ってものがない。伊織兄さんって・・・ぜってーSだ!!S!!
苑子のほうは「早めに課題を終わらせて、大晦日からのんびりしたいだろう?正月も勉強したいのか?苑子は」と伊織兄さんに言われて「それはやだよ~」と、兄さんに乗せられて課題をこなしている。
自分の部屋でレポートを書きつつ、俺は苑子に心の中でエールを送った。
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聡太は頭を抱えて、ちょっとあたふた。
次回からはthree stepsに入ります。