-2
兄はニヤリ、弟は同情。の巻
「はあ?何言ってんだ。付き合ってもないのに、手なんか出すか!」
俺は伊織さんと兄のつながりに驚きつつも、兄の言葉につい声を荒げてしまう。
「今はまだ、だろう?これから先はないって言い切れるか」
「え。」
「専心祭で案内をしたってことは、伊織の耳には入ってるだろうね。・・・」と兄が言いかけたところで、兄の携帯電話が鳴った。
俺たちに断って、兄が電話を取った。受信画面を見て一瞬驚き、あわてて電話に出た。
「もしもし・・・お、久しぶりだなあ。元気かよ~。時間?大丈夫だけど・・・・・え?駿介は俺の弟だけど・・・」
どうやら伊織さんからの電話らしい。
「そうだな。受験生だから、合格発表が終わったら煮るなり焼くなり好きなようにしてくれよ。・・・お、いいねえ。じゃあ明日な」
電話を切った後、孝介兄さんは俺を見てニヤリと笑った。
「よかったな駿介。受験期間中のお前は無事だ。・・・さあ、ケーキ食おうぜ」
「ちょっとまて、兄さん。どういうことだ」
「妹に激甘で過保護な兄が、その妹に手を出しそうな男の顔を合格発表が終わったら見たいんだってさ。頑張って受からないと、認めてもらえねえな。頑張れよ」
「はあ?どうしてそうなる。」
「駿兄ちゃん、大変だなあ~」裕介に同情されてしまった。
そういえば、裕介は泰斗の1年生だ。武内さんのことを知ってるだろうか。
「裕介、このケーキをくれたのは武内苑子さんと言って、お前と同じ泰斗の1年生なんだけど知ってるか?」
「え?1年生の武内?・・・・うーんと、もしかして図書委員かな」
「うん。たぶん、その子だと思う。前に図書委員会のミーティングで、とか聞いたことあるから」
「それなら知ってる。俺、バスケ部じゃない?同じ部の高野がその子のこと好きみたいでさ、なにかと行動してるんだけど、ことごとく玉砕してる。でも、駿兄ちゃんが相手じゃ、高野に勝ち目はないね」
武内さんのことを好きな男がいる・・・・なんだか面白くない。玉砕しているというのは気の毒だけど、ちょっと嬉しいのはどういうわけだ。
なんで、俺は俺だけの武内さんって考えちゃうんだろう。
ケーキをもらってきた者の権限を主張して、2個を確保した俺だけど心の中に浮かんだ武内さんに対する独占欲が消えない。
ケーキの感想を書いたメールを送った後、しばらくたって武内さんから返信がきた。
一度も使ったことのない絵文字を使ってメールしたところ、「絵文字、使うんですね」というメールがきた。
高野ってヤツはきっと、彼女のメルアドも知らないしメールもやり取りしたことがないだろう。俺はちょっと優越感を覚えてしまった。
それにしても、武内さんに対する独占欲・・・これって、やっぱり小動物に対する気持ちとちょっと違うような気がする。兄さんから「これから先はないって言い切れるか」と言われたときに「ない」とは言いたくなかった。
う~ん、とりあえず考えを切り替えて、勉強しよう。合格を武内さんに教えられるように、きちんと彼女に向き合えるように。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
駿介の気持ちに変化が現れた!!しかし、勉強に逃げた。
(某ゲームのコマンド風にお読みください)




