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伊織、登場。の巻
ケーキを渡したことを樹理ちゃんに電話で報告し、なんとなく伊織お兄ちゃんの話になった。
「伊織さん、彼女とクリスマスは過ごさないのかなあ。」
「昨年、“おりくんもクリスマスは彼女と過ごせばいいのに”って言ったら“苑子は俺に帰ってきてほしくないのか~”って、ずーっと鬱陶しかったから、家では禁句だよ」
「・・・・うわ~~。鬱陶しいイケメン・・・やだなあ」
「おりくんがイケメンかどうかは知らないけど、ずーっとネチネチ言われるんだよ。鬱陶しいよ。」
「そういうことを伊織さんに言えるのは、苑子だけだよ」
「そう?樹理ちゃんが言っても大丈夫だよ」
「・・・・ムリ。あ、そろそろ伊織さん帰ってくる時間じゃない?」
「あ。そうだ。じゃあね、樹理ちゃん」と私は電話を切った。
なんだか知らないけど、私の周囲では伊織お兄ちゃんって恐れられている。普通に優しいお兄ちゃんなのに。
「ただいま~。外は寒い~~」黒いマフラーをぐるぐる巻きにし、若干メガネを曇らせた伊織お兄ちゃんが帰ってきた。
「おかえり、おりくん」と私が玄関で迎えると、「おー、苑子!久しぶりだなあ。高校楽しいか?」と夏休みのときと同じことを言う。
聡太お兄ちゃんに対しては、「よお、聡太」と一言だけ・・・・いいのかな。
「さて、苑子。成績表を見せて。」
「う・・・・うん」
伊織お兄ちゃんが、長期休暇で帰ってきてまずすることは、私の成績表チェックだ。お父さんもお母さんも「帰ってきてすぐ見なくても。苑子もがんばってるし」って、言ってくれるんだけど、「プロセスより結果が大事だからね。」と一蹴した。
「・・・・夏休みよりは数学の成績も上がったようだね。」成績表のチェックが親より厳しい・・・。
「分からないところは、そうくんに教えてもらってたから。そうくんのおかげだよ」
「そうか。じゃあ、これからも俺がいないときは、聡太に勉強を見てもらうようにね」と、伊織お兄ちゃんが成績表を閉じた。
あとは寝るだけになって部屋に戻ったとき、携帯がメールを受信しているのに気がついた。
「ケーキ美味しかったよ。一人で食べようと思ったら兄と弟に見つかってしまい、兄弟で食べました。」
カップケーキ4個渡してるんだけど。一人一個として、残り1つはどうしたのかなあ・・・・
「メールありがとうございます。遅い時間にすみません。4個あったはずなのですが、残り1個は内藤さんは食べることができましたか?」
というメールを送ったら、すぐに返信がきた。
「もらってきた者の権限を使って、俺は2個確保」これにVサインの絵文字がついてきた。
思わず「絵文字、使うんですね」と返信してしまった。
すると「いつもは使わないんだけど、使ってみました」と今度はお辞儀してる絵文字。
今まで、何度かメールのやりとりをしてても絵文字を使わなかった内藤さんが使ってる。
またひとつ、内藤さんの新しい一面を見つけた気がした。
読了ありがとうございました。
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長兄・伊織を登場させました。・・・・さて、どうしようかな。
次の話は、内藤家でケーキをめぐる話です。