6.意外な展開
6.意外な展開
第3グループ。 竹内、恭子、良介、本田、江藤がスタンバイ。 第1投。
竹内は8ピン、その後、スペア獲得。 今日子は1ピン、2投目は6ピン。 良介は9ピン&スペア。 本田は5ピン+3ピン。 江藤は8ピン、2投目はミス。
1フレーム終わって、ストライクが志田、井川、純。 良介、竹内、中川、小暮がスペア。 以下、8ピンで知美、本田、江藤。 7ピンで名取、優子、今日子。 6ピンで青田。3ピンの秋元が最下位。
井川の計略にはまった感じの秋元は、2フレーム以降、気合を入れなおして何とか盛り返そうと奮闘したが、なかなかスペアが取れず、思うようにスコアが伸びない。
青田もボウリングは苦手と見えて、100オーバーが難しくなった。
女性陣はみんな愛嬌。 ボウリングよりも、久しぶりに会った純や優子との話が楽しいみたいで、スコアなど全く気にしないでやっている。 そんな中、知美がダブルを出した。
「オー!」全員が知美のベンチまで押し寄せてハイタッチ。
井川はコンスタントにスペアを重ねて行く。 逆に志田は、井川が予言したとおり、だんだん尻すぼみになる。 面白くないからビールをあおる。
「ほらみろ! お前なんか、そんなもんだ」と井川。
「違うんだよ。 穴が小さくて指が入らないんだよ。 入るヤツは重たいのしかないから握力がなくなってきたさ」
本当は12ポンドくらいで投げたいのに、志田は指が太いので15ポンドのボールでなければ指が入る穴があいているボールがなかったのだ。
「だったら、自分のボール持ってくればよかったじゃないか」とからかう井川。
「ミッキー!」投げるたびにそうつぶやくのは小暮。 その甲斐もなく、スコアは平凡な126。
竹内、中川、良介はスペアは拾うが、ストライクがなかなか出なかった。
1ゲーム終了してトップは知美。
「えっ? ともちゃんがトップ?」みんな意外な顔をした。 スコアは148。 井川や竹内の方がいいスコアだったから目立たなかったが、ハンデが大きいのだ。
女性陣は、アベレージが低い分ハンデが大きい。 知美は68、今日子は76、優子は72。 純は、アベレージが高いので14。
トータルで、216。 井川は168のハンデが24、トータル192で2位につけた。
3位は170+ハンデ5で175の竹内。 他はハンデ込みの150前後で、優勝はこの3人に絞られたかのように思われた。
中川は競馬新聞をチェックした。
「ともちゃんは何枠だ? うわあ、買ってないよ」と叫んだ。
「ほーらな! 女の子がいいって言っただろう」そう言って井川はほくそ笑む。
「日下部! 時間はどうだ? ちょっと休憩しようや」右手を振りながら志田が持ちかけた。
時間には余裕があったので、2ゲームを始める前に少し休憩を入れることにした。
しばらくすると、名取がコンビニの袋を抱えてきた。
「社長からの差し入れです」中身は缶チューハイだった。
「ほら、みんな飲め」志田は、みんなに缶チューハイを配るよう、名取に指示した。
「社長はきっと、共倒れを狙っているんですよ」本田が良介に耳打ちする。
本田は、会社を辞めるまでは、志田とコンビで仕事をすることが多かったので、志田の考え方はよく知っていた。
「望むところですよ。 というか、ボクも、景気付けにガソリンを補給しないと調子が出ないかも」良介はライム味の缶チューハイを手に取ると、一気に半分を飲みほした。
それからタバコに火を付けて、喫煙所の方へ歩いて行った。
喫煙所には井川、名取、小暮がいた。
「どうだ? 調子は?」井川が良介に聞いた。
良介はタバコの煙を深く吸い込んで、天井に向かってゆっくり吐き出した。
「まあ、こんなもんですよ。 そろそろ2ゲーム目を始めますよ」