5.ゲームスタート! 出だしは…
5.ゲームスタート! 出だしは…
井川と秋元がまだ来ていなかったが、時間になったので10分間の練習を開始した。 社長の志田がいきなりストライクを出して場の雰囲気が盛り上がった。 良介は会費の徴収をしながら、青田に馬券の受付を頼んだ。
「事前に新聞を配ってるんだから、前もって買ってくれればいいのに、どうして、毎回、直前にならないと買わないんだか」ぶつくさ言いながら馬券の受付をしている青田をしり目に、中川と本田は恐縮しながら声をかけた。
「すいません。 馬券の用紙下さい」
練習時間が終了する間際に井川と秋元がやって来た。
「いや~悪い悪い」既に赤い顔をした井川。
「また飲まされちゃったよ」と秋元。
「なんだよ。いちばん先に出たのに、遅いんじゃないか?」志田が嫌みを言う。
「これくらいの方がちょうどいいんだよ。 社長の相手をするには」井川も負けない。
社長の志田と、井川は同期入社で腐れ縁。 いつもこんな調子だが、本当は仲がいい。
全員揃ったところで、いよいよスタート。 各レーン最初の投球者が位置に着く。 一斉に第1投目を勢いよく放りだした。
志田と井川、純がストライク。 優子はお愛嬌のガーター。 名取は中途半端な7ピンだった。
「社長、凄~い」同じレーンの女性陣今日子と知美にもてはやされ、志田はご機嫌の様子だ。 そして、缶ビールを一気に煽る。
「イエーイ!」良介、青田と同じレーンの純はベンチに戻って来てメンバーとハイタッチ。
「ざまあみろ!」井川は志田に向かってガッツポーズ。 しかし、志田もストライクだと気づくと「社長は最初だけ」と皮肉を言った。
優子は恥ずかしそうにベンチに戻ると、舌を出して愛嬌を振りまいた。
名取はスペアを取ろうと、残ったピンを見つめている。 そして2投目。 ギリギリ、ボール一つ分しか無いピンの隙間を見事に通過。
「うわあ! あそこ通すほうが難しいだろう」まったくその通りだが、ミスはミスだ。
優子の2投目はかろうじて溝に落ちずに済んだが、ドミノ式にピンが倒れて7ピンをゲットした。
「わーい!」万歳して喜ぶ優子。 みんなも拍手して喜んだ。
名取は「ちぇっ」と頭をかいた。
「まだまだ、これからだよ」小暮が名取の方をポンと叩いて立ちあがった。
2番手グループ。 秋元はガーター、知美は5ピン、青田もガーター、中川は8ピン、小暮も8ピン。
2投目。 中川と小暮はスペア。 秋元は3ピン、知美は3ピン、青田は6ピン。
「ふふふ。秋元は終わったな」と井川。
「ダメだ。 井川さんの思うつぼだ」秋元は頭を抱えた。
さあ、3番手グループ。 良介の出番だ。