2.競馬新聞
2.競馬新聞
取り合えず、会場は確保した。 次は参加者を募集しなければならない。
参加者は相変わらずのメンバーになるだろう。
パソコンで“たま遊会”のファイルを開く。 『ボウリング大会申し込み用紙』をクリックする。
前回の○×やハンデをクリアにして日付を変更。 プリントアウト。 貼りだす。 完了。
引き続き、『競馬新聞』をクリック。
競馬新聞には参加者を競馬の馬風にしたネーミング… 例えば、良介の場合は“エーキューカンジ”、若い名取は“キャバクラキング”といった具合にして、馬券用に一覧表にしたものだ。
この『競馬新聞』は本物の競馬新聞並みに絶妙に作られている。
本人の性格に応じて、脚質や距離適性、父馬・母馬の名前まで記されている。 更に、前回までのアベレージ、最近のスコア等、馬券を予想するのに必要と思われるデータが満載されている。
社長の志田曰く「これは金を取って売れるなあ」とまで言わせたくらいだ。
参加メンバーは大体同じなので、枠の順番を入れ替える。 前回スコア、今回ハンデ、寸評、予想記事をクリアにする。
これを大会3日前くらいまでに、時間を見ながら仕上げていかなくてはならない。
参加申し込み用紙が貼りだされると、否応なしにも盛り上がってくる。
名取が良介のそばにやって来てささやいた。
「日下部さん、悪いけど、今回は優勝させていただきますよ」
「はいはい」良介は軽くあしらう。 毎回聞くこのセリフ。 しかし、一度も優勝したことがない。
秋元が言う。 「今回は換金できそうな賞品はあるのか?」まさに、“カンキンオウジ”だ。
小暮が確認しに来る。「優勝はディズニーですよね? カミさんと子供が当てにしてるんですよ」小暮は前回優勝してディズニーチケットのファミリーセットを獲得した。 それ以来、家族から「パパすごい!」と尊敬されている半面「今度も」と期待をかけられプレッシャーでもあるらしい。
そんなたわごとを聞きながら、イベントの企画も最終段階に入って来た。 まずは、こっちが最優先だ。 場所を押さえたので、新聞がなくても、賞品がなくてもボウリングはできる。
あと3日。 企画が完成して関係各所への資材や製品の発注が終わる。 “社長杯”のことはそれからだ。 十分間に合う。