10.一件落着
10.一件落着
馬券の行方を決定する第2位。 秋元と竹内は良介が口にする名前を、固唾をのんで見守った。
「続きまして、第2位は佐々山さん!」良介は秋元の方をちらっと見た。 竹内が笑って聞き流しているのに対して、期待が大きかった分、落胆の色が表情ににじみ出ている。
知美は映画のDVDを賞品として受け取った。 そして、良介は淡々と表彰を続けた。 3位は中川。 映画のペアチケット。 飛び賞は5位が社長の志田。 10位が今日子。 ブービーの14位が純。
「というわけで、馬券の方は小暮君と佐々山さんで2-8で確定です。 的中者が3名います。 売上総額の2万1千6百円を三等分した7千2百円が配当金になります。 的中者、まずは…。 さすが!帝王青田君。 今回も的中で、ここまで負けなしの6連勝です。 そして、佐々山さん。 もう一人は…。 すいません! ボクです」
「ちくしょー! 二次会は日下部と青田のおごりだな」秋元は悔しそうに叫んだ。
表彰が終わったので、やっと良介も落ち着いて飲める。 そう思った時、社長の志田が立ち上がって、話し始めた。
「みんな、今日は本当にお疲れさん。 今日は社長杯ということで、私のポケットマネーで“社長賞”を二つ用意しました。 実は、これについては、ゲームが始まる前に青田君に番号を渡しています。 その番号の順位の人に差し上げたいと思います」
予想外の賞品に会場のメンバーは再び盛り上がった。 青田が、志田から提示されていた番号が書かれた紙が入った封筒を取り出した。 まず、ひとつ目。 “8”番。
「8番です。 8位の方はどなたですか? 日下部さん」青田は良介に順位を確認した。
「8位ねぇ…。 8位は優子ちゃんだよ」 良介が言うと、優子は「うそー!」と叫んで良介が持っていた順位表を見に来た。 「本当だ! うれしーい」そして、志田から賞品を受け取った。「おめでとう! 笠原さん」
青田はもう一つの封筒から番号を取り出した。 “11”番。「日下部さん?」 青田が良介に確認する。
「うわっ! 11位は同点で3人いるよ。」良介はそう言って順位表を見せた。 良介、江藤、青田が同点で11位だった。
「それじゃあ、その中でいちばんハンデが少ないのは誰だ?」志田が聞いた。 良介は渋々答えた。
「それだと、ボクです」良介は幹事なので、こういう賞はできれば他のメンバーに当たってほしかった。 そこで「それじゃあ、他の二人に悪いので、ここはジャンケンにしましょう」と提案した。 志田は良介がそれでいのならとこの提案を承諾した。
「それでは、『最初はグー』からいきますよ」青田が音頭を取った。
「最初はグー。 あいこでしょー」
良介はグーを出した。 青田と江藤はともにチョキ。 結局、もう一つの社長賞は良介が貰うことになった。 しかし、良介は結婚したばかりの江藤にこっそり賞品を譲った。
さあ、あとは飲むだけだ。 既に、みんないい気分に出来上がっている。